日々の運動習慣で
脳の慢性神経炎症を防ぐ

 慢性的な状態になると、うつ病や不安障害といった精神疾患のリスクを高めるだけでなく、免疫機能を低下させて感染症にかかりやすくなったり、血圧を上昇させるなど、全身にネガティブな影響を及ぼすことがあるのです。

 脳も例外ではありません。ストレスが続くことで、視床下部領域の炎症を引き起こすことがわかってきています。脳神経に炎症が生じると疲労耐性が低下し、疲れやすい状態に陥ってしまいます。

 こうしたストレスによる脳への悪影響を予防する方法として、運動が効果的だということを順天堂大学の研究チームが明らかにしました。

 高血圧の状態にしたラットに運動できる環境を与えると、血圧を調整する脳領域への炎症細胞の広がりが抑制されることがわかったのです。

 つまり、日常的に運動を行うことで、ストレスによる脳の慢性神経炎症が抑制できる可能性があることが示唆されました。

 パーキンソン病やアルツハイマー病、うつ病なども脳神経の炎症によって発症する神経炎症性疾患に分類されていますが、運動はそれらを予防する効果があることも、これまでの研究ですでに明らかになっています。

 日常的に運動を行うことは、多種多様なネガティブ要因から脳を守ることにつながるのは間違いありません。脳の健康維持のためにも、1日1運動を心がけていきましょう。

内臓脂肪量を減らすことで
認知症の発症を予防できる

「最近、お腹まわりが気になってきた」「若い頃より体重が落ちにくくなった」と感じている人は多いのではないでしょうか。中年期に差し掛かると、内臓脂肪が増えるのもやむを得ない、自然なことだと軽視していると、体形の問題だけではなく、脳にも負担をかけてしまいます。

 近年の研究では、内臓脂肪の量が多い人ほど、脳の慢性神経炎症が起きやすい傾向にあることがわかってきました。

 アメリカのワシントン大学の研究グループは、2023年に、内臓脂肪と脳の変化に関する研究結果を発表しています。

 対象となったのは、40~60歳でBMI指数(編集部注/体重÷身長÷身長で算出される肥満度を表す国際的な体格指数。標準値は22とされている)が平均32の肥満傾向にある54名でした。

 研究では、参加者の血糖値やインスリン値などを検査し、腹部の内臓脂肪と皮下脂肪の体積をMRIで測定。さらに、脳を検査するMRI(PET)でアルツハイマー型認知症の影響が現れやすい脳領域の皮質の厚さを調べました。

 その結果、内臓脂肪が多い人ほど、楔前部と呼ばれる脳の領域の皮質に、アルツハイマー型認知症の初期段階に似た変化が現れることがわかりました。

『脳を休める!』書影脳を休める!』(川島隆太、扶桑社)

 楔前部とは、アルツハイマー型認知症の原因物質の1つとされるアミロイドβが蓄積しやすい領域として知られています。

 内臓脂肪が多い人の脳の異常な変化は、平均50歳からすでに始まっていて、早期から認知機能が低下しやすい可能性があるそうです。

 ただし逆にいえば、中年期のうちに内臓脂肪量を減らすことができれば、脳の疲労耐性を保ち、将来のアルツハイマー型認知症の発症を予防できる可能性があります。

 中年期は基礎代謝の低下に加えて、不規則な食生活や運動不足などによって内臓脂肪が増えやすい時期でもあります。「年だし少しくらいなら仕方ない」と放置せず、内臓脂肪を溜め込みすぎない生活習慣を心がけましょう。