石井光太・作家

「やばい」「きもい」しか言えない
子どもたちの深刻な問題

 日常生活の中で、美しいことも、悲しいことも、嬉しいことも、すべて「やばい」など極端な言葉で表現する人が増えています。

 ですが、限られた乱暴な言葉しか使えない人は、子どもから大人まで大きな生きづらさを抱えることになるのをご存じでしょうか。

 言葉は、感情や状況など世界のあらゆることを把握するために不可欠なものです。

 きちんと使えなければ、自分の気持ちを整理できない、相手の思いを想像できない、状況を細かく判断できない、他者とわかり合えない、課題の解決方法を考えられないといったことが起こるのです。

 新刊『「ことばで伝える」ができない子どもたち』で、そうした子どもたちの現状を詳しく描いたところ、続々と反響が届きました。

 ある小学校の先生の言葉です。

「本校でも言葉を使えない子は、いじめや校内暴力などさまざまな問題を起こしています。隣の席の子が筆箱を忘れただけで『きもい』と言ったり、遊びの誘いを断られただけで『死ね』と言ったりするのですから、健全な人間関係を築けないのは当然です。こういう子は年々増えている印象です」

 本書は発売前に大重版していますが、それだけ危機感を抱いている方が多いということなのでしょう。

子どものお絵描きを見て
「この絵、やば!」という保育士

 本書の取材で話を聞いた保育園の先生によれば、親だけでなく、保育士も言葉の乱れが顕著だそうです。たとえば、散歩中にきれいな花を見て「うわ、エグ!」と言い、子どものお絵描きを見て「この絵、やば!」と言う。

 こうした環境では、子どもも同じ言葉を使うようになります。給食で大好きなカレーが出てきて「エグっ」と言い、友達が転んだのを見て「きしょい」と言う。驚くことに、今は3歳児の時点でそういう話し方をするそうです。