GLP-1薬で減量、拒食症の治療を受ける人々PHOTO ILLUSTRATION: LUCY JONES FOR WSJ

 モリー・テイラーさん(23)は2024年秋に糖尿病治療薬「マンジャロ」を投与し始め、その効果の速さに驚いた。肥満ではなかったが、体形に満足していなかった。投与を始めると食べる量が減り、食べたいものを食べられるようになった。周囲から外見を褒められるようになり、気後れすることもなくなった。

 やがて考え方が変わり始めた。

「自分が何を食べているのか、カロリーはどれくらいか、これを食べると体重が減らなくなるのではないか、と気になりだした」。ロンドンでシッターをしながら看護師を目指して勉強中のテイラーさんはこう語った。「この頃から拒食症が始まっていたのだと思う」

 GLP-1受容体作動薬は奇跡の薬としてもてはやされ、米国では肥満症の改善で大きな成果を上げた。2月に発表されたJPモルガンの調査によると、米国では利用者が約1300万人に上る。この薬はホルモンに似た働きをし、食欲を抑えて満腹感をもたらす。食事制限をつらいと感じる人にとって甘い誘惑であると同時に、危険なものにもなり得る。

 非営利団体の米国拒食症・関連障害協会(NAANAD)がまとめたデータによると、拒食症による死亡率は摂食障害の中で最も高く、精神疾患の中ではオピオイド(麻薬性鎮痛薬)依存症に次いで2番目に高い。

「私自身、何年も前に拒食症から回復したが、もし当時この薬が出回っていたら間違いなく手に入れようとしただろう」。療法士でイーティング・ディスオーダー・センター創設者のジェニファー・ローリン氏はこう話す。同センターはメリーランド州ロックビルを中心に、7州で患者を受け入れている。

「レッドカーペット上のセレブを見たり、多くの友人や家族から減量を自慢されたりしたことが大きなきっかけになった患者は多い」とローリン氏は話す。

 同氏の施設で治療を受ける摂食障害の患者には、食欲を抑えるためにGLP-1薬を入手した人や、承認されている適応症のために同薬を使用していた人もいる。