過去の「自己分析」に
とらわれてはいけない

 もちろん、せっかく本を書くなら売れたほうがいいし、社会の規範に大きく反しないほうがいいかもしれない。

 けれども、気づくとその主従が逆転してしまうことがあります。規範を守って、スコアを上げて、周囲から好かれること自体が目的になってしまう。その結果、自分が純粋に書きたいことがよくわからなくなってしまう。こういう力学が働くわけです。

 それに、人間は変わります。就職活動の際に自己分析を通して「自分の軸はこれだ!」と確信していた人も、社会人になって3年も経てば、自分の大事なことがまた見えなくなって、モヤモヤしてくるものです。目標を達成して満足したり、挫折を味わったり、さまざまな経験を通して価値観は変容するのです。

 職場が変わったり、家族ができたりなど、環境の変化にも影響を受けます。新型コロナウイルスの脅威を経験したことで、働き方や暮らし方の考えが変わってしまったという人も少なくないでしょう。放っておくと、知らないうちに「自分」という生き物は、別の生き物に変身していくのです。

 だからこそ、「自分は昔からやりたいことがハッキリしている」「自分の価値観はとっくに言語化済みだ」と確信している人ほど、静かな時間にリフレクションをすることを「習慣化」してほしいと思うのです。

 自分自身の内面に起きている小さな変化に目を向けて、言語化する癖をつけていただきたいと思うのです。これが、私が万人におすすめしたい静かな時間の使い方です。

「仕事の価値観」を
言語化できない現代人

 実際に、さまざまな調査データに目を向けると、現代人はリフレクションが圧倒的に足りていません。

 たとえば転職経験者1000名を対象にしたある調査では、定期的に自身のキャリアやスキルの振り返りをしている人はわずか17.1%でした(注1)。

(注1)Eight「転職経験者のキャリア形成に関する意識調査」~定期的にキャリアの棚卸しをしているのは転職経験者の2割未満、20代転職経験者の7割がコロナ禍で転職を考えるように~https://jp.corp-sansan.com/news/2022/0602.html