しかし、このときは、引き上げ幅の急増、政策決定のプロセスのずさんさなどに、がんや難病などの患者団体が猛反発し、高額療養費の見直しは方針転換が繰り返された。身内の与党内部からも反対意見が出され、衆参両院で当初予算案が修正されるという異例の事態に発展した。そして、最終的に25年度の見直し案は白紙撤回に追い込まれたのだ。

 この失態を挽回するため、政府は厚生労働省に「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」を設置して、当事者である患者代表を交えた議論を行い、改めて見直しの方向性を探ることになった。こうした審議を経た高額療養費の見直し案は改めて26年度予算案に盛り込まれ、5月の改正医療保険法成立によって、実施の運びとなった。

 前回と比べて、26年度案には大きな反対運動も起こらず、原案通りの可決となったのは、今回の制度改正で長期療養者や低所得者に配慮した内容が盛り込まれたことが理由のひとつだ。

 今回の改正では、長期療養している患者に配慮して、多数回該当の限度額は現行水準が維持されることになった。また、年収200万円未満の人は多数回該当の限度額が、これまでの4万4400円から、27年8月以降は3万4500円に見直される。

 さらには、長期療養しているのに、1カ月の自己負担額がギリギリで限度額に届かないために、高額療養費の適用を受けられない人の負担を軽減するために、新たに年間上限も設けられた。今後は、1年間に支払う医療費の自己負担額は一定範囲内に抑えられるようになる。

 このように、26年度案では患者の負担を抑えるための仕組みも導入されたが、結局のところ、自己負担限度額そのものは全ての所得層で引き上げられている。引き上げ幅は25年度予算案と比べると半額程度に抑えられたが、住民税非課税世帯を含めた全ての所得区分で負担増となっている。特に高所得層の負担は重くなる。