年収は同じなのになぜ?「大企業勤務」と「中小企業勤務」で医療費負担に差が出る理由写真はイメージです Photo:PIXTA

前編『高額療養費の見直しで「医療費の自己負担」はどう変わる?医療費100万円でも“3割負担”になるケースとは』では、高額療養費の自己負担限度額が、今後どのように変わっていくかを確認した。2026年度の制度改正では、白紙撤回された25年度案に比べると自己負担限度額の引き上げ幅は半額程度に抑えられているが、全ての所得層が引き上げの対象となった。
また、多数回該当の据え置きと年間上限の新設で、長期療養者や低所得層への配慮は見られるものの、「3大課題」は解消されていない。連載『医療費の裏ワザと落とし穴』311回となる後編では、3大課題について問題提起する。(フリーライター 早川幸子)

配慮措置導入でも解決できない
高額療養費の3つの問題点

 患者団体などが指摘している、2026年度の高額療養費制度の見直しにおける3大課題は以下の通りだ。

(1)長期療養中に健康保険の加入先が変わると多数回該当がリセットされる
(2)低所得層の自己負担限度額がWHOの破滅的医療支出を超えている
(3)自己負担限度額の引き上げが加入先による給付格差を助長する

 それぞれ詳しく見ていこう。

(1)長期療養中に健康保険の加入先が変わると多数回該当がリセットされる

 高額療養費は、医療費が高額になって、1カ月の自己負担額があらかじめ決められた限度額に達すると適用されて、患者の自己負担額が一定範囲内に収まる仕組みになっている。さらに、長期療養者の負担を抑えるために多数回該当という制度があり、高額療養費が適用された月が過去12カ月に3回以上になると、4回目からの限度額が引き下げられる。

 例えば、年収600万円のAさん(会社員)の場合、26年8月現在の高額療養費の自己負担限度額は、(ウ)の【8万5800円+(医療費-28万6000円)×1%】。1カ月の医療費が100万円だった場合、最終的な患者の自己負担額は9万2940円だ。だが、過去1年以内に高額療養費が適用された月が3回になると、4回目からは4万4400円に引き下げられる。

 多数回該当は、がんや難病などで長期療養している人にとって、負担を抑える重要な仕組みだが、転職や引っ越しなどで健康保険の加入先が変わると高額療養費の適用月のカウントがリセットされてしまうのだ。

 年収600万円のAさんを例に取ると、多数回該当で月額4万4400円に抑えられていた自己負担額が、健保組合を変わったということだけで、再び約9万円に引き上げられてしまう。