すべては「なんかヘン」からはじまる
─思考停止から抜け出す方法
ここで、アウトプット鑑賞の手はじめに1つお題を─。
さきほどの作品を見て「なんかヘン」と思ったことに“ひと言ツッコミ”を入れてみてください。「有名な画家による名画である」という情報はいったん脇に置き、辛口の批判家になったつもりでスバッとひと言。それではどうぞ!
「なんの絵かよくわからん!」
「ぼやけすぎ」
「下の方の色がきたない!」
アート作品に対してツッコミを入れるだなんて、「そんな失礼なことしちゃっていいの!?」とちょっと驚かれたのではないかと思います。
私自身、美術館での鑑賞会などで「ひと言ツッコミをしてみましょう」と参加者に投げかけるときには、その作品の作者や、美術館の方々がどう思うだろうかと内心ドキドキします。それでも、あえて「なんかヘン」からはじめるのには2つのワケがあります。
1つめの理由は、アート作品に対する先入観を取り払うためです。
ともすると「有名な作品だから」「美術館に飾られているから」という理由だけで、自分の目で見る前から「これはきっとすばらしいものだ!」と思い込んでしまう人は少なくありません。まずはツッコミを入れることで、そのような思い込みによる思考停止を和らげることができます。
2つめの理由は「アウトプット鑑賞ではどんな意見を出してもかまわない」ということを実感していただきたいからです。
鑑賞の手はじめに無理矢理にでも作品にツッコミを入れてしまうことで、そのあとはたとえおかしな意見だってアウトプットしやすくなりますよね。
「気づき・感想」が出づらい人には
「2つの問いかけ」が効く
さて、“ひと言ツッコミ”が終わったら、続いては作品を見て「気づいたこと」や「感じたこと」をどんどんアウトプットしていく段です。
とはいえ、初めは「赤っぽい」など、どんなに単純でも、あたりまえのことでもかまいません。内容の質にこだわらずに、とにかく思ったことをなんでも文字・声にすることがポイントです。
このように「気づいたこと・感じたこと」をアウトプットしていくだけでも十分な鑑賞ができますが、さらに深く自分の意見を導き出したいときには、次の「2つの問いかけ」が役に立ちます。
■そこからどう思う?―「気づいたこと(事実)」から、「感じたこと(主観)」を問う
■どこからそう思う?―「感じたこと(主観)」から、根拠となる「気づき(事実)」を問う
とてもシンプルな問いかけですね。
たとえば「赤っぽい」というアウトプットは、絵を見て「気づいたこと(事実)」ですので、「そこからどう思う?」と自らに問いかけてみましょう。すると「燃えているみたい」などと、自分が「感じたこと(主観)」を導き出せるかもしれません。
今度は「不穏な感じ」というアウトプットが出てきたとします。これはさきほどとは反対に、絵を見て「感じたこと(主観)」ですから、「どこからそう思う?」と自分に問いかけてみてください。すると「あまりにぼやけていて、なにが描かれているかわからないからかな……」というように、自分の意見の出どころである「気づき(事実)」を認識できます。
このように「2つの問いかけ」も交えてみることで、1つのアウトプットから次々に新たなアウトプットを導き出すことができますよ。
それでは、先ほどのモネの作品をいま一度見ながらアウトプットをしてみましょう!
―そこからどう思う?
「燃えているみたい」
「溶岩のかたまり」
「それとも夕焼けかな」
「でも絵の上のほうは水色だから、昼間だと思う」
―どこからそう思う?
「あまりにぼやけていて、なにが描かれているかわからないからかな……」
「蜃気楼に包まれている」
「夢のなかの世界」
「アラビアン・ナイトの宮殿みたいだ」
「中央に黄色い丸がある」
―そこからどう思う?
「小さい目玉焼きみたいで妙に気になる」
「なにかのスイッチ?」
―そこからどう思う?
「煙が巻き立っているのかな」
「下半分は水面で、建物がそこに映っている?」
「黄色、オレンジ、白、水色、青、紫……」
「この絵には、ない色がない!」
あなたもなにかアウトプットすることはできましたか?
見れば見るほどさまざまな捉え方ができる幻想的な作品ですね。それにしても、作者のモネはどんなことを考えてこの絵を描いたのでしょうか……?
次の記事では、モネの名画が生まれた背景に迫ります。






