結局、大学や王立協会などの調査の結果、CRUの研究に不正行為は確認されなかったとの結論が出た。けれども、気候変動対策を進める動きは、研究費や社会的影響力を獲得しようとする科学者グループの陰謀ではないかとの見方が広がり、「ウォーターゲート事件」にかけて「クライメートゲート事件」と呼ばれるようになった。

気候変動の原因を
不確定とする論文はごくわずか

 地球温暖化をめぐっては、「色々な議論があって、よくわからない」との印象を持っている人も少なくないのではないだろうか。しかし、ここまで見てきたように、地球温暖化の存在やその原因についての現時点での通説(主流の仮説)は定まっていると言って良い。

 科学史家のナオミ・オレスケスは、これを定量的に示している。オレスケスは、1993年から2003年の期間に、「地球規模の気候変動」というキーワードで学術論文のデータベース(ISI)を検索し、査読付き学術雑誌に掲載された928件の論文の要旨を分析した。その結果、気候変動の主な要因は人間活動にある(=人為的気候変動が生じている)というIPCCの報告書などで合意された見解を、明示的ないし非明示的に認める論文が全体の75%、現在の気候変動については見解を示していない論文が全体の25%で、合意された見解を拒否する論文は皆無だった(注3)。

 気候コミュニケーションの研究者ジョン・クックらが、さらに多くの論文要旨(1万1944件)を分析した研究でも、人為的地球温暖化を否定ないし不確実とする論文は計1.0%だった。

(注3)Oreskes, Naomi, 2004, “The Scientific Consensus on Climate Change,” Science, 306: 1686.