人は何のためなら頑張れる?→「生きる力」が湧く〈ひと言〉に胸が熱くなる〈風、薫る第94回〉

長太郎の切実な叫びが奇跡を呼ぶ

 避病院(伝染病専門の隔離施設のこと)が混み過ぎていて、治るものも治らない状況だった。黒川(平埜生成)が役場の山辺(六角慎司)に頼み、村長(大高洋夫)に家を患者のためにあけてもらうように交渉することに。

 村では村長の家がだだっ広いので使わせてほしいということなのだが、さすがに自分の家に赤痢患者をいれることを許容するのは容易ではないだろう。

 当然、村長は断る。

 このままでは、太助(板橋駿谷)のように家族が赤痢に罹ったことをひた隠しにし、それによって感染が拡大してしまう。じりじりする村人たち。

 すると、おりしも村長の妻も赤痢の兆候が出て……。

 村長は家の開放を承諾することを余儀なくされるのだった。村長だって家族のことは大事なのだ。その様子を、横沢が手帳にメモしている。

 さっそく、避病院から増えた患者を村長宅に移動。その様子を心配そうに見ている長太郎に直美が声をかける。

「何、話したい、おっかあに会えたら?」

 もじもじする長太郎に、「言いたいことは言わなきゃ伝わらないよ」

 いやいや、彼は第91回で初登場したときには言いたいこと「お母さんを助けて」と口にしている。その後は、大人たちに行動を制されていて言いたいことが言えなくなっているだけだと思う。

 どうも『風、薫る』ではりんも直美も、会話が独特で引っかかる。引っかかりがあると、視聴者は聞こうとするし考えようとするものだから、それを促すためにあえてやっていると解釈したい。

 その頃、アサはまた熱が上がって、すっかり諦め気味な顔になっていた。気が遠くなりそうになって、目を瞑ってしまう。このまま目が開かなくなったら……と心配になったとき、「おっかあ!」と外で声がした。長太郎の声だ。

「おら待ってるから」「がんばれおっかあ」

 庭の柵越しに長太郎が声を張り上げる。子役の健気な演技が胸を打つ。