70代、80代になっても、頭はできるだけ冴えたままでいたい――そう願う人は多いだろう。そのために運動や食事に気を配る人は少なくないが、実は認知症予防のためにさらに効果的な習慣がある。元オックスフォード大の医学研究者であり、「糖と脳」の専門家として知られる医師・下村健寿氏が推奨する、その意外な方法とは?(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
※本稿は、下村健寿『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』の一部を引用・編集して作成した記事です。
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5人に1人が認知症になる時代に「必要なこと」
少子高齢化が進む日本では、60代、70代になっても働き続けることが求められる時代が訪れている。
そこで、ジムに通って体を鍛えたり、健康本を読んで実践したりして体力の維持に努めている人も少なくない。
しかし、体が健康なだけでは仕事は続けられない。
全身を司る「脳」が正常に機能しなくなると、すべてが無意味になってしまう。
厚生労働省の報告などによれば2025年の認知症発症数は700万人。高齢者の5人に1人に相当する。
この傾向は今後も続くと考えられている。つまりいまの若い人たちや働き盛りの人たちも、5分の1の確率で、将来的に認知症になる恐れがあるということだ。
そこで、早いうちから認知症のを予防する習慣を始めることが大切だ。
運動をする。
食事に気をつける。
脳トレをする。
そういった習慣に取り組んでいる人も多いだろう。
なかでも、元オックスフォード大の医学研究者であり、「糖と脳」の専門家として知られる医師・下村健寿氏が推奨する、「脳の認知機能を維持する効果が期待できる習慣」がある。
それが、「文章を書くこと」だ。
「事実を書く」より「創造的に描く」
文章を書くこと自体が、記憶を呼び起こし、頭を使う活動だ。
日記や自分史を書くのも効果的である。
しかし下村氏は、認知症予防という観点では、それ以上におすすめの方法があるという。
日記や自分史は、主に焦点が当たるのは「執筆者自身の過去の記憶」であり、多くの場合、そこには「読者」の存在が薄い。つまり執筆者の中で完結しがちな活動であるという点が共通しています。
じつは脳の活性化につながる、もっと強力なアプローチが存在します。
「創造的な文章」を書くことです。単なる過去の記録に留まらず、想像力を最大限に引き出し、新しいアイデアや世界観を生み出す執筆のことです。
(下村健寿著『糖毒脳』より)
過去を思い出すだけではなく、未来を想像したり、新しい世界を考えたりする「創造的な思考」が、より幅広い脳の領域を刺激すると考えられている。
未来の目標を書く。
架空の物語を考える。
詩や俳句を作る。
こうした創造的な執筆は、認知機能の維持・向上にも役立つ可能性があるという。
「認知症」になりたくないなら今すぐやるべき習慣
なかでも、下村氏がとくに勧めているのが「小説の執筆」だ。
創造的な文章のなかでも、認知症予防に極めて有効であることが報告されているのが「小説の執筆」です。読者を意識し、登場人物の感情や思考を創造することで「他者」との関わりを強く意識するためです。
(下村健寿著『糖毒脳』より)
登場人物が何を感じるのか。
読者はどこで驚き、どこで感動するのか。
そうした他者の視点を考えながら物語を組み立てることで、脳のさまざまな領域が同時に働く。
下村氏は、自分史を書きたい人も、そのまま事実を書き並べるのではなく、「読者の心を揺さぶる小説」として再構成してみてはどうかと提案している。
認知症になりたくないなら、「書く習慣」を持ってみる。
とくに、「読者に向けた創造的な文章」を書いてみる。
そんな習慣が、脳にとって最も良い刺激になるのである。
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。








