頑固でも、意地悪でもない…融通が利かない人の「納得の正体」〈風、薫る第95回〉

りん、舎監を辞める決意をする

 また、『ばけばけ』101回のレビューで『明治大正昭和 値段史年表』(朝日新聞社)から引用した給料はこうだった。

巡査の初任給(明治24年):8円
(現在でいう)都知事の給料(明治24年):4000円
公務員の初任給(明治27年):50円
国会議員の報酬(明治22年):800円
日雇い労働者の賃金(明治25年):全国平均18銭

 りんの働くモチベーションはお金。娘の環(英茉)のために働いている。その気持ちをわかったうえで、黒川は1年の期間を設けた。

「そのあとは大家さんに譲る」

 深読みすれば、黒川は医者として、りんが完全復活するために1年間、働いてもらったうえで、派出看護をやったほうがいいと思ったのかもしれない。いきなり慣れない派出看護をはじめるのも不安があるだろうから。

 いずれにしても、りん、引っ張りだこ。彼女が誠実なのは認めるが、それほど優秀とは思えない。もっともこの当時、看護婦の知識と経験がある人は少ないので、それだけでも必要とされるに足りるのかもしれない。

 1年で看護婦を一人でも多く育ててほしいと、黒川は看護婦が早急に必要だと感じている。モチーフになっている実在の人物・大関和は書かれた本を読むと、とっても優秀に思えるのだが。

 ここでりんは珍しく、舎監の仕事を紹介してくれた捨松(多部未華子)や校長先生(関智一)にお伺いを立てないといけないと常識的なことを言う。これまでの、ものごとの順序がどこかバラバラな感じとは違う。

 りんは、山本の一件以降、「適応障害」のようになっていたと解釈していたと見上愛はインタビューで語っていた(詳細は『「なるべく考えないようにしています」朝ドラ主演・見上愛が役作りで徹底している意外なこと』https://diamond.jp/articles/-/395808 を参照)

 その適応障害が治って秩序を取り戻したのではないか。

 悪い病気が消えて、いい風が吹いてきた。同時に村の秩序も戻ってきた。

 横沢(井上祐貴)は村長(大高洋夫)に、自宅を開放したのは大英断でしたねと讃える。新聞に良く書かれることを期待する村長。このいかにも狭い場所での権力者という感じの村長もこれで退場だろうか。

 村長役の大高洋夫は、鴻上尚史主宰の劇団第三舞台の屋台骨と鴻上に信頼されている俳優だ。これまでの名作で常にテーマ的ないいセリフ、役割を担ってきた。小劇場が社会的な人気だったときのトップスターなのである。その大高も出る第三舞台2026「パレイドリア」が今月上演される。レジェンドな演技を見せてくれるだろう。