企業価値を最大化するのは
「プラットフォーマー」

――AI企業として見た場合、ソフトバンクグループとNTTのどちらが、3年後に企業価値をより高めていると考えますか。

長野氏 私は、ソフトバンクグループのほうが企業価値を高める可能性が大きいと見ています。

 判断の軸は、AIの性能を単純に比べることではありません。これから大量に生まれるAIを使ったサービスが、どの企業の基盤モデル(ChatGPT、Claude、Qwenなど)や計算資源を使うのかです。

 インターネットの歴史を振り返ると、企業価値を大きく伸ばしたのはプラットフォームを握った企業でした。

 NTTドコモのiモードも、GREEやモバゲーも、数多くの第三者がその基盤上でコンテンツやサービスを提供したから価値が高まった。Facebookも同じですね。

 AIでも、アプリの開発会社同士が競争する一方、その多くが共通して同じLLMのAPIを利用する状態になれば、基盤モデルを持つ企業へ継続的に収益が流れ込みます。利用するアプリが増えるほど基盤の価値も高まる、勝者総取りの構造です。

 現在、私たちが投資を検討するAIスタートアップでは、OpenAI、Anthropic、Googleなど海外大手の基盤モデルを使うことが圧倒的に多い。ソフトバンクグループはOpenAIと深く結び付きながら、半導体、データセンター、国内企業への導入まで、AIの複数の階層でポジションを取ろうとしています。この立ち位置は日本企業の中で突出しています。

ANOBAKA 代表取締役社長/パートナー長野 泰和さん長野 泰和
ANOBAKA 代表取締役社長/パートナー

KLab株式会社入社後、BtoBソリューション営業を経て、社長室にて新規事業開発のグループリーダーに就任。その後、2011年12月に設立したKLab Venturesの立ち上げに携わり、取締役に就任。2012年4月に同社の代表取締役社長に就任。17社のベンチャーへの投資を実行する。2015年10月にKVPを設立、同社代表取締役社長に就任。KVPでは5年間で80社以上のスタートアップへ投資。2020年12月ANOBAKAを設立。

――NTTが開発する小型の国産LLMや、オンプレミス重視の戦略はどう評価しますか。

長野氏 需要は確実にあります。機密情報を扱う大企業や行政では、データを外部環境に出せず、自社専用の環境でAIを動かしたいというニーズが強い。日本語や個別業務に特化したLLMを組み込み、システム開発や運用支援とセットで提供するビジネスは十分に成立します。NTTグループの顧客基盤やSIの力も生かせるでしょう。

 ただし、世界中で爆発的に増える汎用的なAIアプリケーションの基盤を押さえる戦略とは異なります。NTTは顧客ごとの課題を解決し、積み上げ型で収益を伸ばす。一方、ソフトバンクグループは世界的なプラットフォームの成長を取り込み、成功すれば企業価値が非連続に跳ねる余地を狙う。投資家は「国産か海外産か」ではなく、両社が対象とする市場の大きさと、収益が伸びる形の違いを見るべきです。