「人間関係はいいのに、なぜか成果が出ない」――そんな職場に心当たりはないだろうか。雰囲気がよく、目立った対立もない。一見すると理想的な職場に思えるが、実は「いい人ばかり」であることが、組織の成長を妨げてしまうことがある。では、居心地のいい職場がうまくいかなくなるのは、なぜなのだろうか。『3000件の職場の悩みを解決したプロが教える リーダーのふるまい大全』の著者・本田淳也氏が、その理由を解説する。

いい人ばかりの職場がうまくいかない理由・ベスト1Photo: Adobe Stock

居心地はいいのに、なぜか成果が出ない

「うちの職場、人間関係はいいんですけどね……」

こういう言葉の後には、たいてい「でも」が続きます。
売上が伸びない、問題がなかなか解決しない、チームとして前に進めている感じがしない
――雰囲気はいいのに、なぜかうまくいかない。
その原因が、実は「いい人ばかり」であることにあるんです。

理由は一つ、誰も嫌われたくないから

いい人ばかりの職場で起きていることを整理すると、こうなります。

注意する人がいない。反対意見を言う人がいない。問題を指摘する人がいない。みんな空気を読んでいる。

一見、パワハラもなく、穏やかで働きやすそうに見えます。
でも実態は、「嫌われたくない」という心理が職場全体を支配している状態です。

誰かがミスをしても、「言いにくいから」と見て見ぬふりをする。
会議で疑問を感じても、「場の雰囲気を壊したくないから」と黙っている。
おかしいと思っても、「自分だけが浮くのは嫌だから」と合わせてしまう。

こうして問題は放置され、誤った方向に進んでいることに誰も気づかないまま、組織はじわじわと弱くなっていきます。

「優しさ」が組織を停滞させる

厄介なのは、これが悪意から起きていないことです。全員が「波風を立てたくない」「相手を傷つけたくない」という思いやりから行動しています。
でも、その思いやりが積み重なると、組織として機能しなくなっていくんです。

心理学では「集団思考」と呼ばれる現象があります。
集団の和を優先するあまり、批判的な思考が抑制され、誤った判断が修正されないまま進んでしまうというものです。
仲のいいチームほど、この落とし穴にはまりやすい。

本当にいい職場とは

本当にいい職場とは、言いにくいことも、お互いの成長のために伝え合える職場です。

時に反対意見を言える、問題があれば指摘できる、それでも関係が壊れない
――そういう強さを持ったチームこそが、長期的にうまくいく組織です。
居心地のよさと、健全な緊張感。その両立を意識してみてください。