音読みは、中国からの伝来時期によって大きく3つの系統(呉音・漢音・唐音)がありますが、その詳細についてはここでは割愛します。
一方の訓読みはより複雑です。これもやはり漢字を日本語として読むためのひとつの方法で、ひとつの漢字に、その意味に近いやまとことば、つまり古来日本列島で話されてきた日本語での読み方を当てはめて読むというものです。
これは広い意味でのあて読みと言えるもので、だからこそ人名の読みが一見してわからない、という現象も生まれるのですが、「盛」を「もる」とも「さかる」とも訓読みするように、文脈によってさまざまな訓読みがあり得ます。
そのような多種多様な訓読みの中で、「山」を「やま」、「丘」を「おか」と読むように、その漢字を見た時に多くの人間がある特定の読み方で読む、つまり字とやまとことばとの関係が緊密なものが特に「定訓」と呼ばれています。私たちが訓読みとして思い浮かべるものがそれに相当するでしょう。
「重箱読み」「湯桶読み」は
耳で意味を伝えるための工夫
よく知られているように、漢字の熟語の読み方に「重箱読み」と「湯桶読み」があります。「台所」とか「番組」のように、最初の漢字を音読みで、次を訓読みで読むのが「重箱読み」で、逆に「株券」とか「夕刊」のように訓読み音読みの順に読む読み方を「湯桶読み」といいますね。
「重箱」とは、おせち料理が入っているおなじみの道具ですが、ここに出てくる「湯桶」を、私はずっと入浴に使う風呂桶だと思っていました。
でもそれはまちがいで、「湯桶」とは湯や酒を入れる漆塗り容器のこと、よく知られているものではそば屋さんで「そば湯」を入れて出てくるあの木製容器が「湯桶」です。重箱と湯桶は、どちらも食卓で使われる漆塗りの道具に由来する名称だったのです。
もともと漢字熟語は音読みで読むのが正しいあり方でした。だからほとんどの学術用語は「技術」「機械」「数学」「文法」というように音読みで読まれます。
しかし音読みは耳で聞いただけではわからない、という特徴があります。たとえば「海」を「カイ」と、「紙」を「シ」と音読みで読まれても、耳で聞いただけではなんのことかわかりません。
漢字は訓読みにしてはじめて意味がわかるので、重箱読みと湯桶読みは、漢字の熟語を耳で聞いたときに少しでもわかりやすくするための変則的な読み方として発生したものでした。







