卑弥呼像 Photo:PIXTA
「邪馬台国」や「卑弥呼」と聞いて、「なぜ『邪』『卑』のような、悪い意味を持つ漢字が使われているのか」と疑問に思ったことはないだろうか。歴史好きの間では、中国が日本を見下し、あえてこうした漢字を選んだという説がたびたび語られてきた。ところが、古代中国の発音辞典『広韻』を手がかりに音訳に使われた漢字を調べてみると、意外な事実が見えてくる。「邪」や「卑」は、日本を侮辱するために選ばれたのではなく、音を表すために選ばれた可能性が高いというのだ。いったい、どういうことなのか。※本稿は、日本漢字能力検定協会編『漢字の大疑問 いつも使っているのに意外と知らない言葉の世界』(マガジンハウス)の田中郁也執筆部分を抜粋・編集したものです。
なぜ「卑弥呼」や「邪馬台国」に
よくない意味の字が使われたのか?
邪馬台国について取りざたされる話の中で、次のような話をよく聞きます。
当時の日本の固有名詞を漢字で表した「邪馬台国」や「卑弥呼」といった名前には、わざと「邪」や「卑」といったよくない意味を持つ漢字が使われている。中華思想(世界の中心は中国であり周辺には野蛮人が住んでいるという思想)が背景にあるのでこのようによくない意味の字が使われているのだ。
中華思想(華夷思想)は小中学校の授業でも習う有名なもので、一見すると、その正しさについて特に深く考える必要もなさそうなのですが、この話には実は反論があるのです。
その反論とは故・尾崎雄二郎氏(京都大学名誉教授)によってなされたものです。その反論の主旨を理解するため、まずは前提となる知識を簡単に説明しておきましょう。
古代中国では音節ごとに
代表となる漢字があった
古代中国には「韻書」と呼ばれる辞典のジャンルがありました。五十音順に見出し語を並べる現代の国語辞典がそうであるように、発音によって各字を配列し、発音や意味を解説したものです。







