2019年に大腸がんを患いながら、わずか半年で一軍に復帰した元阪神タイガースの原口文仁氏。その復活劇の裏では、がんの患部が肛門からわずか1センチという難しい手術が行われていた。通常なら人工肛門を造設するケースで、医師団の意見も割れたという。なぜ執刀医は「作らない」と判断したのか。主治医が手術の知られざる舞台裏を語った。※本稿は、原口文仁『道なき道を』(集英社)の主治医寄稿部分を抜粋・編集したものです。
手術後の痛みにも
弱音を吐かなかった原口さん
元阪神・原口文仁氏 撮影/岡田佳那子
原口文仁さんは、気丈な人だという印象です。決して弱音を吐くタイプではなかったですね。
「しんどいですよね?」とこちらが問うと、少し困ったような笑顔で、「まぁ、ちょっとだけしんどいですよねぇ」という答え。
原口さんの姿勢は、治療が終わるまで一貫していました。決してやせ我慢ではない「大丈夫です」を何度も聞いたように思います。痛みに対する感覚は人それぞれ違いますが、少なくとも手術直後の3日間などは、絶対に痛かったはずです。
粛々と現状を受け止め、耐えている姿を見ると、医者という立場はさておき、人として、もっとなんとかしてあげたいという気持ちになりました。
手術後に、思っていたよりがんのステージが進行していたという説明をしたときも、おそらく驚いたと同時に、複雑な心境だったと思います。それでも、原口さんの答えは「わかりました」という冷静なひと言。
まだ1歳にならない娘さんを抱っこしていた奥さまが、後ろで涙をこらえきれない様子だったことを鮮明に覚えています。
忘れられないのは、いくつも想定外のことが起こった手術中のことです。







