通常、租税特別措置において減税する場合には、減税の対象となる支出を減税額算出の根拠とする。たとえば、中小企業投資促進税制は中小企業の育成や保護を目的にした租税特別措置だ。

 この場合、中小企業が設備投資をすると設備を取得した価格の7%を法人税から控除するか、または30%を特別償却(費用として計上)できる。つまり、設備投資を促す税制であれば、設備投資をした費用から税額控除額を算出するのだ。

 ところが、賃上げ税制・教育訓練費上乗せ制度の場合には、適用条件の支出(教育訓練費増額分)と減税対象となる支出(給与増額分)が異なるのだ。こうした制度は他の租税特別措置には存在しておらず、会計検査院は「ほかに例がない」と述べている(編集部注/大企業では、教育訓練費の増加割合が20%以上の場合、給与等支給増加額の5%相当が法人税から控除される)。

中小企業の約8割で税額控除が
教育訓練費増加額を上回った

 図表4-32は、賃上げ税制・教育訓練費上乗せ制度による税控除の適用状況をみたものである。

図表4-32 教育訓練費上乗せによる税控除の適用状況同書より転載 拡大画像表示

 円グラフの濃いグレー部分は教育訓練費増加額よりも控除された税額の方が多い企業数と割合を示している。つまり税控除の方が過大である法人数だ。ちなみに、薄いグレー部分は税額控除額が、教育訓練費増加以下の法人数である。

 そして、この制度の適用を受けた中小企業の約8割、大企業の約7割が過大に税控除を受けていたことが分かる。この事実は、制度に歪みが生じている証左である。

 留意してほしいのは、これらの企業はあくまでも合法的な手続きのもとで税控除を受けているという点である。まずいのは制度の歪みである。