高層ビルが立ち並ぶドバイの街並み写真はイメージです Photo:PIXTA

「中東=石油」という見方は、すでに古くなりつつある。この地域の経済と勢力図は大きく動いている。中東はこれからどこへ向かうのか。※本稿は、元外交官で著述家の山中俊之『世界のエリートが学んでいる教養としての超現代史』(SB新書)の一部を抜粋・編集したものです。

湾岸諸国は「石油大国」から
新技術の投資拠点へ

 中東が日本にとって重要なエネルギー供給源である点は今後も急には変わらないでしょうが、同時に、再生可能エネルギーの実験場としても重要性を増していくと考えられます。

 湾岸諸国には「石油」のイメージが強いと思いますが、ふんだんな太陽光と広大な砂漠という「再生可能エネルギー」資源も豊富と言えます。これまで石油で蓄えた莫大な資本をそこに投じることで、「化石燃料輸出国」から「エネルギー・テクノロジー投資国」へとポジションチェンジする。これが、湾岸諸国の新たなエネルギー経済政策なのです。

 ただし、再生可能エネルギー由来の電力を日本など遠く離れた国に輸出するには、まだ蓄電や輸送の技術が足りません。したがって当面は、再生可能エネルギーの「地産地消」が続くでしょう。

 もちろん、ゆくゆくは蓄電や輸送の課題が解決される日が来るかもしれません。そうなれば、中東の国々が「オイルマネーから脱却し、主要な産業構造の転換に成功した資産国家」としてグローバルサウスの資金供給源、あるいは新技術の投資拠点として存在感を発揮していく未来も考えられるでしょう。

 地政学的には「石油の偏在」が中東の重要性を高めてきたという歴史的経緯があります。今後、エネルギーの主役が再生可能エネルギーや水素へと移行していけば、ホルムズ海峡やペルシャ湾の地政学的重要性は、過去数十年に比べて相対的に低下していくでしょう。

 また、AIの時代に需要が激増するデータセンターについても土地がふんだんにあるため可能性があります。サウジアラビアは、豊富な土地と安価な電力のポテンシャルを生かして、紅海沿岸に世界でもっとも安価なデータセンター建設を目指しているようです(2025年12月17日 英エコノミスト誌)。

なぜ中東では強権体制が
長く続いてきたのか

 次に政治体制に目を向けると、湾岸の王政国家やイランのような強権体制が、短期的に崩壊する可能性は低いでしょう。

 イランでは宗教と政治が深く結びついており、イスラム法学者が最高指導者として政策を決定づけるという仕組みがあります。しかしながら、アメリカの経済制裁により苦境にあり、国民の不満は明らかに高まっています。2026年2月のアメリカのイラン攻撃の影響がどうなるのかは、予断を許しません。