研修を受けながらメモを取る作業服姿の社員たち写真はイメージです Photo:PIXTA

社員の教育訓練費をわずか5万円増やした企業が、法人税の税額控除を約1000万円受けていた――。しかも、これは脱税や制度の悪用ではなく、合法的な手続きによるものだった。なぜ、これほど大きな「ねじれ」が生じたのか。元会計検査院長の田中弥生氏が、実際の企業事例や会計検査院の分析から、賃上げ税制に組み込まれた教育訓練費上乗せ制度の歪みと、その効果を検証する。※本稿は、東京大学公共政策大学院客員教授の田中弥生『税金はどこへ行くのか 元会計検査院長が見た「日本の財政」』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

5万円の教育訓練費の増加で
1000万円の法人税控除

 社員の教育や訓練費用を昨年より5万円増やしたことで、法人税が1000万円も減税された企業がある。そんなことがあるのかと思うだろうが、実在していたのだ。

 図表4-27は、賃上げ税制・教育訓練費上乗せ制度を適用したある会社の教育訓練費と税の控除額である。

図表4-27 賃上げ税制・教育訓練費上乗せを適用した企業例同書より転載 拡大画像表示

 この会社は賃上げを行い、賃上げ税制が適用され、法人税が減税された。さらに教育訓練費の増加によって、減税額が増えている。

 5万円の教育訓練費の増加額で、1000万円の法人税控除と聞いたら、誰もが違和感を抱くだろう。だが、それは法律違反でも、脱税でもない。合法的な手続きのもとでなされたものである。そうであれば、この税制に歪みがあるのではないか。