「タバコミュニケーションのおかげで、仕事がスムーズに進む」――。昭和の時代から日本の職場でまことしやかに語られてきた「タバコミュニケーション」の有用性。しかし、タバコを吸わない非喫煙者からすれば、サボっているようにも見える喫煙者がなぜか優遇されているように感じられ、モヤモヤした不公平感を抱くことも少なくありません。果たして、このタバコを介した人間関係は本当にキャリアに有利に働いているのでしょうか。話題の書籍『働き方の科学』より、最新のエビデンスに基づいて「タバコミュニケーション」の実態を紹介します。(構成/ダイヤモンド社・上村晃大)

喫煙するビジネスパーソンPhoto: Adobe Stock

昭和の風習「タバコミュニケーション」は本当に出世に有利なのか?

「タバコミュニケーション」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。職場の喫煙所などでタバコを吸いながらの雑談や情報交換を指します。

 普段あまり関わらない部署や役職の高い人と話すことができるので、思わぬところで仕事に役に立つことがあると言われています。

 なんとも昭和的な風習ですが、このタバコミニケーションが出世に有利であることを明らかにした研究があるそうです。話題の書籍『働き方の科学』にはこう書かれています。

 ハーバード大学のゾーイ・カレン准教授らは、東南アジアの男性銀行員の人事データを分析し、喫煙が昇給に与える影響を調べました(*1)。
 その結果、上司が喫煙者だったとき、部下も喫煙者だと昇給の確率が高まることがわかりました
 図1を見てください。横軸は、0の時点で上司が非喫煙者から喫煙者に変わったことを表しています。縦軸は、部下の給与グレードの変化を表しています。そして、部下が喫煙者か否かによって、昇給に違いが生まれるのか比べています。
図1 「タバコミュニケーション」は昇進に有利図1 「タバコミュニケーション」は昇進に有利
 部下が非喫煙者の場合、上司が異動によって非喫煙者から喫煙者へと変わっても、部下の給与に変化はありませんでした。
 一方、部下が喫煙者の場合、上司が喫煙者に変わると、その部下の給与グレードが2年半後に0.7ポイント上昇していることがわかりました。喫煙者は非喫煙者と比べて、上司も喫煙者であると、給与が15%も高くなるのです

昇給の正体は単なる「えこひいき」

 上司が喫煙者の場合、喫煙者は非喫煙者と比べて給与に15%もの差があるというのは、いささか不公平ですね。『働き方の科学』はさらに以下のように続いています。

 さらに詳しく分析すると、上司が喫煙者に変わると、同じく喫煙者の部下は休憩時間に上司と過ごす時間が63%増加していました。「タバコミュニケーション」を通じて上司との距離が縮まることで、部下は昇給の恩恵を受けることができるのです。
 ただし、上がったのは喫煙者の給与だけで、生産性や労働時間は変わりませんでした。つまり、昇給は喫煙者同士の「えこひいき」によるものだということです。

 喫煙所での情報交換が生産性を上げるというわけではなくて、単なるえこひいきなのでは、不公平以外の何者でもありませんね。


*1 Cullen, Z., & Perez-Truglia, R. (2023). The old boys’ club: Schmoozing and the gender gap. American Economic Review, 113(7), 1703-1740. https://doi.org/10.1257/aer.20210863