(3)登場人物に感情移入できるかどうか

 登場人物たちは、基本的にはみんないい人に見える。

 咲子と充はお互いを思い合う仲の良い夫婦であったし、充がいなくなった後も咲子はその優しさを思い返してばかりいる。また、樹生があずさを愛していたことは間違いないし、あずさも不誠実な人物には見えない。

 ただ、善良な普通の人であるはずの彼らは、全員どこか陰があり、人にはあえて言わない部分を抱えているように見える。

 5話までで明かされるのは、それぞれが生まれ育った家庭に何らかの問題や葛藤があった様子であることだ。ただ、これが今後のストーリーにどの程度影響するのかはまだわからない。

 メイン4人の登場人物たちはみんな、人に気を遣おうとする性格である。しかしその気の遣い方はそれぞれ微妙に異なり、相手を気遣ったことが良い結果を招くことばかりではないように見える。

 明確な悪人がいるわけではなく、登場人物がみんな「気を遣ういい人」であるからこそ、そこから生まれるコミュニケーションの複雑さがある。悪意はないのだが、だからこそ本音を隠すことがあり、それが展開に不穏な陰を落とす。

 じれったく思う人もいるだろう。普通の人なのに、感情移入しやすいか否かで言えば、決してしやすくはない。そのようなキャラクターたちを見続けることができるかどうかも試されている。


一言で語り尽くせぬドラマ

 こういった点をまとめてみると、『Tシャツが乾くまで』は、その面白さを一言では伝えづらいドラマである。既存のドラマのパターンに当てはめづらく、これまでに似ているドラマがあまりないと言ってもいいかもしれない。

 確かに面白いし、続きが気になるが、面白いポイントを言語化しようとすると、そこからするりと抜けていくようなつかみどころのなさがある。蒼井優は、届きそうで届かないような、親しみやすさとミステリアスな雰囲気が同居する俳優だ。そんな彼女だからこそ、このつかみどころのないドラマの世界観に見事にマッチしている。

 今後の展開を楽しみに見守りたい。