スティーブ・ジョブズ氏スティーブ・ジョブズ氏 Photo:Bloomberg/gettyimages

2007年、スティーブ・ジョブズが世界に初めてiPhoneを披露したプレゼンテーションは、今なお「伝説」として語り継がれている。彼はそこで何を語り、聴衆を熱狂へと導いたのか。iPhoneの発表から、人の心をつかむプレゼンの秘密を読み解く。※本稿は、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長の伊藤羊一『語りの牙 論理と感情をつなぎ、確実に刺す全技術』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

ジョブズの言葉に世界が熱狂
iPhone発表は何がすごかった?

「This is the day」から始まるこの伝説のプレゼンテーションの映像を、私はそれこそ何百回と繰り返し視聴してきました。何度見ても、全身が総毛立つような感動を覚えます。

 ジョブズはまず、「2年半、この日を待ち続けていた」「数年に一度、すべてを変えてしまう新製品が現れる」と、今この瞬間に立ち会う聴衆の期待感を高めます。

 次に、彼は時計の針を大きく戻し、Appleの歩んできた「歴史」を語ります。

 1984年に発表したマッキントッシュがPC業界を、2001年に発表したiPodが音楽の聴き方だけでなく音楽業界そのものを革新したことを振り返りながら。

「そして、今日、我々はこれらと同等に革命的な3つの新製品を発表する」

 この言葉で、ジョブズは再び聴衆を「現在」に引き戻します。今から話すことが単なる新製品ではなく、Appleという企業が成す「歴史のダイナミズム」であることを明確にする言葉です。