ここからが衝撃の展開です。「3つの製品」と言いながら、その3つが示す機能――ワイド画面でタッチ操作できる新型iPod、革命的な携帯電話、ネット通信機器――それらが実は“一つのデバイス”であることを明かし、聴衆を沸かせます。

「名前は、『iPhone』。今日、アップルは電話を再定義します」

 巨大なスクリーンに映し出された「iPhone」の文字に、会場の興奮はピークに達します。

 ここからさらに、ジョブズは現状の携帯電話が抱える課題をiPhoneがどのように変えていくのか、具体的な機能を紹介しながら、聴衆を「ワクワクする未来」へと誘っていくのです。

「新製品発表」というステージで、ジョブズが見せたのは単なるスペック表ではありませんでした。

 過去・現在・未来と時空を超えるストーリーを語りながら、その製品があることで「私たちの生活がどう輝くか」という未来の約束、そして、その場に立ち会った一人ひとりがその未来に向かうまでの歴史の一部になったことを宣言したのです。

人の心に届くために必要な
ストーリーの時間軸

 とはいえ、きっとこのように感じる人も多いはずです。

「いきなりジョブズみたいになれるわけがない」

 たしかに、彼のように神がかったプレゼンは、世界の風景を一変させる革新的なアイディアや開発のセンスという才能とセットであることも否めません。

 しかしながら、ジョブズのプレゼンにも通じる「ストーリーの時間軸」を身につける上で学ぶべき「基本の型」は存在します。

 私自身が長年指針としてきた、素晴らしい参照元があります。広報コンサルタントの平野日出木さんによる名著、『「物語力」で人を動かせ!』(三笠書房)で説かれたストーリーテリングの型です。

 平野さんによると、時間軸でストーリーを語るときに効果的な順番は「現在→過去→現在→未来」という4ステップなのだそうです。

 なぜ、この順番で語ることで、相手の心に深く届くのでしょうか。

 それは、この流れが人間の脳にとって最も自然で、納得感を得やすい構成だからです。各ステップの役割を整理してみましょう。