中国人民の自由を奪う政策の総仕上げ
この規定は、習指導部のもとで積み上げられてきた自国民に対する国家安全法制の、1つの到達点だ。平たく言うと「中国人民の自由を奪う政策の総仕上げ」である。
その始まりは、2015年に全面改正された国家安全法である。この法律では、政治・経済・文化・科学技術など多岐にわたる領域について包括的な国家安全観を確立した。
それ以後は、それぞれの領域を埋める作業がおこなわれていく。2017年の国家情報法と、2021年のデータ安全法と反外国制裁法は、その名前からもわかるように「外部からの脅威」への対処を主な目的とした。
さらに大きく流れが変わったのは、2023年の反スパイ法改正だ。この改正によって、国家安全機関が一定の中国公民の出国を禁止できることが明文化され、国家安全を理由に個人の移動を制限する法的枠組みが強化された。
また、2024年に施行された愛国主義教育法は、すべての公民に愛国主義教育を及ぼすことを定め、英雄烈士の否定や侵略戦争の美化などを禁止行為として列挙して、自由を奪うと同時に「中国人としての義務」を大幅に増やした。
違反行為については、関連法令に基づいて法的責任が問われうる。さらに、2025年には治安管理処罰法が約20年ぶりに全面改正され、中国人民の日常行為を行政処罰の対象としうる法体系も更新された。
反スパイ法改正、愛国主義教育法、治安管理処罰法改正、そして、今回の出入国規定という、この4年間の流れを時系列で追うと、そこに1つの方向性が浮かび上がる。それは、外国の脅威への対処を掲げて拡大してきた国家安全の論理が、徐々に自国民の日常生活や移動にも及んでいることだ。
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ただし、中国公民の出国を制限する仕組みそのものは、2015年以前から存在していた。刑事事件の被疑者、未解決の民事案件の当事者、国家安全に関わる者などの出国制限は、2013年施行の出境入境管理法にすでに書き込まれている。
今回の出国制限制度は一から作られたものでなく、既存法の規定とその範囲を明確化したものである。中国当局も言うように、既存法の具体化にすぎない。
だが、これまでお飾りにすぎなかった「刀」が、今回、改めて研ぎ直され、切れ味鋭い武器に生まれ変わって当局に手渡されたのである。







