下水道では、自動走行ロボットとAIの画像解析で点検を自動化・遠隔化し、1日3時間かかっていた人手の作業がほぼゼロに。点検を担う職員は、年間1095時間の「手取り時間」を確保できた。手取り時間とは、限られた時間を節約して育児や介護、趣味など自由に活用できる時間のことだ。
生活保護の現場では、AIが法令や通知、過去の事例から必要な情報を整理し、根拠とともに職員へ提示する。東京都62区市町村のアイデアをもとに作られたアプリで、現場からのニーズを継続的に学習していく。すでに3000人以上の職員が活用している。
職員がAIを活用する土台も整えている。生成AIプラットフォーム「A1(えいいち)」は、都とGovTech東京が内製で構築した生成AIアプリを作るための共通基盤で、すでに都職員約6万人および都内の区市町村で利用されている。GovTech東京の井原正博CTOは、「車輪の再発明をしないことを大切にしている」と語る。この「A1」に、職員がノーコードで作ったAIアプリを全体に共有する仕組みがあるのも、知恵と工夫を持ち寄って一緒に育てていくことを目指したからだ。
小池知事は、AIは職員の仕事を奪うものではなく、人がその力を借りてより大きな成果を出すためのものだとして、「自信を持って進めていこう」と呼びかけた。
「意思さえあれば、その時点でデジタル人材」
不足しているデジタル人材は、今いる職員を育てながら、外部の専門家も呼び込む。小池知事は、「各自治体の職員のうち1人でも2人でも10人でもリテラシーを上げていけば、10年で10倍の人数になる」と期待を込める。
だがそれだけでは足りない。GovTech東京にはプロフェッショナルなデジタル人材を集める。その象徴が、モデレーターを務めた宮坂副知事だ。都政に招いたのは小池知事で、ヤフー社長だった宮坂氏とデジタル化について意見を交わす中で、「この人は都政に必要な人だと思って来ていただいて、もう8年」とスカウトの経緯も明かした。
東京都 宮坂学副知事 Photo by M.S.
その宮坂副知事は、人材をめぐる議論にこんな見方を示した。「デジタルを使って行政を変えようという意思のある人は、その時点でもうデジタル人材。そんなに詳しくなくても、デジタルやAIを使って住民福祉を良くするんだという意思を持っていることが大事」
そして、カンファレンスをこう締めくくった。「行政同士でもっと多くのことを分かち合い、オールジャパン、オール世界で公共の世界を良くしていきたい」







