
東京都庁や都内62区市町村のDX最前線を推進する「GovTech(ガブテック)東京」が、行政の現場におけるテクノロジーについて語るカンファレンスを開催した。メインの話題は「行政のデジタルサービスを、内製で開発することについて」だ。なぜ外注任せにせず、ソフトを内製開発しないといけないのか。外注の弊害は4つあるという。また、豊洲市場など、実際に東京都で内製開発し、利用されているサービスの例を具体的に3つ紹介した。(ノンフィクションライター 酒井真弓)
能登半島地震で痛感したデジタルの重要性
都庁や都内62区市町村のDXを推進する「GovTech(ガブテック)東京」が、初のテクノロジーカンファレンスを開催した。東京都副知事でGovTech東京をリードする宮坂学氏(前回記事を参照)に続き、後半では現場のエンジニアが登場した。
GovTech東京には、さまざまな背景を持つエンジニアが集まっている。2024年1月1日、能登半島地震が発生した。そのとき現地にいた井原正博氏(GovTech東京 業務執行理事 兼 CTO)は、避難生活を余儀なくされる中で、デジタルインフラの重要性を痛感することになる。
「地震が起きた瞬間、インターネットが落ち、電気も通信も止まった。行政のサイトも、一番動いてほしいときに止まっていた。珠洲市に津波がきていることも、輪島が燃えていることも、現地にいる自分には分からなかった。役所の職員も被災されている中で、必死に情報を集めて発信していた」

井原氏はソフトウェアエンジニアで、10年前からは自身の会社を経営していた。デジタルの分野なら、自分にも公益に資することができるかもしれないと思った。2024年5月、井原氏は会社を譲渡してGovTech東京に参画した。「東京でも必ず災害が起きる。同じことを繰り返したくない」(井原氏)