梅雨明けとともに、飲料業界にとっては年間で最大の書き入れ時となる夏がやって来た。酒類課税出荷統計(1~6月累計)によると、酒類に関しては、ビール類計、ビール、発泡酒とも年間の落ち込み率が過去最大となり、伸びているのは唯一、新ジャンルだけという例年通りの傾向。だが清涼飲料で今年はちょっとした異変が起きている。熱中症対策飲料という新たなカテゴリーができつつあるのだ。

 同様のカテゴリーは以前からあった。大塚製薬のポカリスエット、日本コカ・コーラのアクエリアスなどを主とするスポーツドリンクや機能性飲料がそれに当たる。

キリンは売り上げ2倍に

 だが、今年はその中でもスポーツではなく日常で飲まれる嗜好性のある清涼飲料でありながら、塩が含まれている飲料で、熱中症予防を前面に打ち出したものが爆発的に売れているのだ。

 例えば、キリンビバレッジの「世界のキッチンから ソルティライチ」は1~6月累計で前年比2倍の販売増となり、7月は製造拠点を7工場から11工場に増やし、3割の増産を行っている。サントリー食品インターナショナルの「グリーン ダ・カ・ラ」なども販売が急増して生産が間に合わず店頭への出荷調整がかかるほどの勢いだ。

小売店では熱中症対策となる塩分を含んだ飲料の特設コーナーもできている
Photo by Yoko Suzuki

 また、サントリーの「塩のはちみつレモン」、アサヒ飲料の「カルピスオアシス」など、旧来の定番ブランドに塩を加えた商品も発売され、業界全体で塩分入りの商品が続々と増えている。スーパー店頭などで専門コーナーが設けられるケースも増えてきた(写真)。

 需要の急増は熱中症の増加によるものだ。消防庁によると、2012年夏季の熱中症による救急搬送人員は全国で4万3864人、08年の調査開始以降、猛暑の10年以来の高水準となった。職場などでの熱中症での死亡数(厚生労働省調べ)も12年は10年以来の高水準となっている。温暖化の影響もあり、夏場の熱中症対策は年々重要性が高まっているのだ。