ANAが示した
「決済額による選別」
ANAは2026年4月、SFCのサービス体系を見直し、年間のANAカード・ANA Pay決済額に基づく二つの区分を設ける案を公表した。判定期間は2026年12月16日から2027年12月15日までで、新しいサービスは2028年4月に始める計画だった。
公表案では、年間決済額が300万円以上の会員を「SFC PLUS」、それに満たない会員を「SFC LITE」とする。PLUSでは従来と同様に指定ラウンジなどを利用できる一方、LITEではラウンジを利用できず、提携航空会社を利用する際のサービスも縮小する内容だった。入会資格そのものは変えず、カード保有者の中を利用状況によって分ける設計である。
この改革に対しては、既存会員から多くの意見が寄せられた。ANAは6月25日、すでに案内した内容を再検討し、2026年9月末までに制度改定の詳細を改めて公表すると発表した。つまり現在は、当初案がそのまま実施されると決まったわけではない。
批判の中心には、一度条件を満たしてSFCを取得すれば、現在のサービスを長く利用できるという期待があった。制度上、将来にわたって全特典が不変であると保証されていたわけではないとしても、長年の運用が顧客の間に事実上の期待を形成していた。改革がその期待を急に変更するものと受け止められたことが、強い反発につながったと考えられる。
経営学的には
それほど悪い改革ではない
それでも、改革の狙い自体は経営学的に見ればそれほど悪くない。ラウンジの席、専用カウンター、優先搭乗の運用、専用デスクの担当者など、上級会員向けサービスを支える資源には限りがある。利用者だけを増やし続ければ、一人当たりのサービス品質が下がるのは避けにくい。
サービス品質を維持する方法は、大きく二つしかない。供給能力を増やすか、利用できる顧客を絞るかである。ラウンジを増床し、人員を増やすことができれば望ましいが、空港施設には物理的な制約があり、投資にも時間と費用がかかる。短期的には、サービスの対象を一定の基準で限定することにも合理性がある。
また、SFCはクレジットカードでもある。継続的にカードを利用し、ANAの経済圏へ収益面で貢献する顧客へ、より多くのサービスを配分するという考え方には一貫性がある。限られた資源を、現在も継続的に利用する顧客へ重点的に配分し、体験の質を維持しようとする改革だと解釈できる。
経営学者のマイケル・ポーターは、差別化とコストリーダーシップの間で中途半端になる危険を指摘した。上質な体験を差別化の源泉にするのであれば、対象を際限なく広げ、サービスを均質化することが必ずしも正解ではない。顧客数を絞ってでも、約束した体験の質を守るという判断は、フルサービスを掲げる企業の戦略として理解できる。
今回の改革案は、単なるコスト削減や顧客軽視と決めつけるべきではない。拡大しすぎたサービスの量を調整し、上級会員制度本来の効果を取り戻そうとした改革と見ることもできる。







