一眼カメラの市場において、王者キヤノンとタムロンに買収提案を行ったソニーは、それぞれの「強み」を持つ(写真はイメージです) Photo:PIXTA
ソニーが強くなるほど
キヤノンには意外な影響が出る
連載「エレキの深層」では、前回ソニーがレンズメーカーのタムロンに買収を提案したことについて、その狙いを考えた。ソニーはミラーレス一眼カメラのαシリーズで、キヤノンに次ぐ世界シェアを持つ。カメラ本体の性能ではキヤノンと十分に競争できるところまで来た一方、カメラシステム全体で考えると課題がある。
キヤノンの強みの一つは豊富なレンズラインアップにある。これに対してソニーは、高級レンズのGマスターでは優れた製品をそろえているものの、その下の準高級価格帯や、コンパクトでコストパフォーマンスの高い望遠レンズなどには補強の余地がある。そこはまさにタムロンが得意としてきた領域だ。だからこそ、ソニーがタムロンの開発力を取り込めば、カメラ本体だけでなく、レンズを含む「カメラシステム」としてキヤノンとの差をさらに縮められる可能性がある。
しかし、これはキヤノンにとって単に「ライバルのレンズが充実する」というだけの問題ではない。実はキヤノンには、ソニーとのシェア差が縮まるほど深刻になる、もう一つの構造的な問題がある。それが、筆者が「二重の規模の経済」と呼びたい問題である。
カメラではキヤノン、
イメージセンサーではソニーに強み
キヤノンは2025年まで23年連続でレンズ交換式デジタルカメラの世界シェア首位を維持している。EOSシリーズではCMOSイメージセンサー、DIGIC画像処理プロセッサー、交換レンズなどの主要部品を自社開発しており、これらを統合して製品を作り込むことがキヤノンの強みになっている。今回注目したいのは、キヤノンがCMOSイメージセンサーを自社開発するだけでなく、自社の工場で生産していることだ。ニコンなどは自社開発のCMOSイメージセンサーであることに変わりはないが、生産はソニーなどに委託している。
さて、ミラーレス一眼カメラなどのレンズ交換式カメラのシェアだけを見れば、規模の経済で有利なのはキヤノンである。カメラをたくさん売れば、カメラ本体の開発費だけでなく、レンズやCMOSイメージセンサーの開発費、製造設備などの固定費を多数の製品に分散できる。世界最大の販売台数を持つことが、キヤノンの垂直統合を成立させる重要な条件になっていると考えられる。
ところが、視点をカメラからCMOSイメージセンサーに移すと、この関係が逆転する。ソニーはαのためだけにイメージセンサーを作っているわけではない。スマートフォン向けを中心として世界最大級のCMOSイメージセンサー事業を持ち、車載や産業用途にも事業を広げている。つまり、「カメラの規模の経済」ではキヤノンがソニーより大きいのに対して、「イメージセンサーの規模の経済」では、ソニーがキヤノンよりはるかに大きい。これが今回指摘したい「二重の規模の経済」である。
半導体は巨額の設備投資を必要とする典型的な装置産業である。単純化すれば、一個当たりの製造コストは、「変動費+固定費÷生産数量」で考えることができる。







