投資テーマの「物語」は経済インフラである
日本では「物語」と聞くと、中身のない宣伝のように感じる人もいるかもしれない。
しかし、経済における投資の物語とは、単なるプロパガンダではない。政府の政策、技術開発、企業の設備投資、市場の拡大、売り上げ、利益、賃金、投資家へのリターンまでを、一つの因果関係として説明することである。
例えば、政府が半導体やデータセンターを支援すると、企業が国内に工場を建設し、電力、建設、空調、通信、材料、検査装置、物流などに広い需要が生まれる可能性がある。その結果、地域に雇用や税収が生まれ、企業の利益や賃金に波及することも考えられる。
重要なのは、こうした因果関係を「必ず株価が上がる」という話にするのではなく、「政策がどの市場を生み、どの企業の投資や成長につながる可能性があるのか」という形で可視化することだ。
もちろん、日本経済には電力不足、人材不足、規制、税制、社会保障負担、企業統治、労働移動など、改革すべき課題が数多く残されている。17の成長分野を決め、370兆円超の官民投資計画を示しただけで、日本経済が復活するわけではない。市場の資金が動かなければ、計画は紙の上で終わる。
日本には2386兆円の家計金融資産がある。世界市場で戦える企業も技術もある。政府は17の戦略分野と62の重点製品・技術を選び、官民投資ロードマップもつくった。
次に必要なのは、この成長戦略を民間市場が企業群へと落とし込み、国内外の長期資金を呼び込む仕組みをつくることである。
政府は市場をつくる。企業はそこで競争する。投資家は勝者を選ぶ。そして資本市場から成長企業へ資金が還流する。
政府が選んだ17の成長分野を、世界の投資家が理解できる共通言語へ変える。
そのための一つの仕組みとして、「J-Tech 17」という構想を検討してみてはどうだろうか。
370兆円という巨額の投資目標を、単なる政策の数字で終わらせず、日本の企業と資本市場を動かす「成長の物語」に変えられるか。日本経済の再成長を左右するのは、そこにかかっている。
(評論家、翻訳家、千代田区議会議員 白川 司)







