これ仕事なんですケド…親身な看護に対する「失礼すぎる誤解」〈風、薫る第106回〉

「看病で触れ合い生じる恋情」

 病院には日夜、負傷兵が運び込まれている。それを親身に看護する多江を見て、ある軍人が「軍人たるもの、治療中であろうと、みだりに女と話してはならん!」と大声でとがめた。

「ここは病院です。会話せずに看護はできません」と反抗したら、地元の新聞社に看護婦について投書され、記事になった。

 看護婦と患者との間に不適切な関係があるという内容で、記事のタイトルは、「看病で触れ合い生じる恋情」

 腹立つ〜、と憤慨するりんと直美。

 こういう局面は、女性が男性の看護を親身に行いはじめたとき、いつか問題視されるのではないかと筆者は思っていた。帝都医大病院のときに勃発しなかったことが不思議なくらいである。

 でもそこでは描かず、軍の病院で描くのは、軍人が四角四面で規則に縛られていること、戦争中という厳しい時期だということと同時に、ここまで親身に看護婦が看護する事例にまだ慣れていないことを強調したかったのだろうか。

 場面変わって、男爵夫人・佳枝(相田翔子)の家。

 このところ指のこわばりがお昼過ぎまで続くというので、りんは、ベッドの横に椅子を置いて、その背につかまって立てるように工夫した。

 このシーンは何のためにあるのか、と考えてみる。

 多江が「会話せずに看護はできません」と言ったことの根拠になっているのではないだろうか。

 りんは佳枝と会話することで、少しでも楽になるヒントを発見している。

 そのことを、軍人たちはわかっていない。

 事務所に戻って、このことを直美に報告するりん。

 りん「少しずつ症状が進行していて。自分じゃできないことが増えていくのは分かっていても辛いだろうなって」
 直美「でも自分で起き上がれるかどうかは大きな違いだよ。この椅子、気づけたのはよかったよ」

 そこで、りんは「小川さんどうだった?」と聞く。

 ここで、直美がすぐに吾郎に言い出せなかった理由がわかる。

 日本が連戦連勝で、軍人はこれから忙しくなりそうだと思うと、言い出しにくいのだ。

「私、お母さんになれると思う?」と直美は珍しく弱気。

「直美さんはね、きっと怖くて、褒め上手ないいお母さんになると思う」

 こういうとき、りんのちょっとぶしつけな物言いは気楽でいい。中には、真剣に聞いているのにふざけないで、と思う人もいるだろうけれど、少なくとも直美にはりんのようなリアクションが気楽なようだ。