「よかった。直美がうれしそうで」
「小川さんもいいお父さんになりそう」とりん。
その晩、ご飯、味噌汁、お漬物。シンプルな夕飯を前に、ついに直美が吾郎に報告する。
「出征の時期がいつ頃になるのかは、だいたいでもわからない?」とまず聞き、「吾郎さんが行く前に産みたいなって思って」
さすが直美、嘘を巧みに操って人を動かしてきただけある。こういうときも、ストレートには言わない。
自分からはっきり言わず相手に察してもらうような言い方をする。
赤ちゃんができたと知って、よかった、と素直に喜ぶ吾郎。
「よかった。直美がうれしそうで」
このセリフに、直美への愛情がにじんでいる。
「いい母親になれるかわからないから。一緒によろしくね」
たぶん、直美は、自分がみなしごで、母の愛を知らないで育ったから、自分が母親になれるか自信がないのだろう。
「少しぐらい料理が雑でも、縫い目がガタガタでも、こどもはたくましく」
「何?悪口?」
「あ、違う違う」
お互い照れながら、吾郎はおずおずと「触っても……」とお腹に手を触れる。
以前、お腹が痛いと嘘をついたりんのお腹に触って視聴者の物議を醸したシマケン(佐野晶哉)の、あの場面(第74回)とはえらい違い。王道ではあるが、あたたかさを感じるシーンになった(シマケンを演じる俳優には何も問題はない、念のため)。
お腹を触る、という行為ひとつとっても、りんと直美、ふたりの主人公で対比がある。
王道の直美、ここで男性にお腹を触らせる?と疑問に思うようなことを行うりん。
こんなこともあるかもしれないと問題提起し、王道で安心させる。ふたりの主人公の見せ方が興味深い。









