面白いのは、仲裁に入るのがけっして「一番強いオス」ではないということ。自分たちよりずっと身体の小さなメスや、無邪気な子どもゴリラが、あわや喧嘩というオス2頭の間にトコトコと割って入るんです。
すると、あんなに凄んでいたオスたちが、「やれやれ、子どもの顔に免じて、今日のところはこれくらいにしておくか」と、ふっと力を抜く。
これ、実はすごい知恵なんですよ。当事者よりも「弱い存在」が間に入ることで、どちらかが負けるという屈辱を味わうことなく、お互いのメンツを保ったまま「引き分け」に持ち込める。もしここで、もっと強いオスが力ずくで抑え込んだら、抑え込まれた双方に不満が残り、火種は消えないでしょう。
「負けない。でも、勝とうとしない」。この絶妙な落としどころを見つけるのが、ゴリラたちの平和主義なんです。
「勝負に勝つ」よりも
ゴリラが大事にしていること
『ゴリラ・イルカの仲間を信じる力』(山極寿一、田島木綿子 青春新書インテリジェンス、青春出版社)
ひるがえって、今の人間社会はどうでしょうか。「勝ち組」「負け組」なんて言葉に象徴されるように、私たちは常に「白黒つけること」を急ぎすぎている気がします。
論破して相手を屈服させても、そこには分断が残るだけです。
私がジャングルで見てきたゴリラたちは、どんなに強いオスでも、小さな仲裁者を尊重し、喜んで「引き分け」を受け入れていました。
「勝負に勝つこと」よりも「一緒に居続けること」を優先する。そのために、あえて引き分ける余裕を作る。
私たち現代人が忘れてしまった「引き分ける勇気」や「勝つことを留保する知恵」を、ゴリラたちはその静かな振る舞いで教えてくれている気がしてなりません。







