中国・北京の天安門Photo:PIXTA

西側主導の国際秩序に正面から対峙する中国。習近平政権の長期化で「豊かな国」より「強い国」へと舵を切る一方、その成長モデルには弱点も見え始めている。「強い中国」は、世界の覇権を握れるのか。※本稿は、元外交官の山中俊之『世界のエリートが学んでいる教養としての超現代史』(SB新書)の一部を抜粋・編集したものです。

習近平政権で中国は
「豊かな国」より「強い国」へ

 2010年、中国が名目GDPで世界第2位の経済大国となると同時に、米中対立は本格フェーズに入りました。以降、中国は国際政治、経済のあらゆる場面で避けて通れない存在になってきましたが、この流れをさらに大きく変えたのが、2012年に発足した習近平政権です。

 習近平は、鄧小平時代に導入された集団指導体制から、習個人が指導する、豊かな国よりも強い国を目指す国家体制に国家のあり方を変えてきています。また、それまで以上に「西側諸国がメインアクターとなって構築してきた国際秩序に正面から対峙していく」という姿勢をはっきりさせました。西側が描いてきた世界地図の上に、自らの論理で線を引き直そうとし始めたのです。

 さらに、本来はあり得ないはずだった習近平の「3期目続投」が決まったのは2022年のこと。70歳を超えてなお権力の座にとどまり、死ぬまで指導者の座に就いている可能性すら見えてきました。ロシアのプーチン大統領とは年齢が近いこともあり、「長期政権を前提にした個人支配型の指導者」として比較されることも増えています。

習近平体制になってから
接待や会合の規制が強化

 私は、これまでに、天安門事件前年の1988年に訪問して以来、出張や調査で25回ほど中国に足を運んできました。その皮膚感覚からも、この20年ほどの中国社会の変化、特に「習近平体制になってからの締めつけ」を強く感じています。

 たとえば、2010年代前半であれば、中国に行くと地方自治体の主催で盛大な会食を開いてくれたものでした。

 2012年に稲盛和夫さんの盛和塾の視察で青島に行ったときも、私は下にも置かぬもてなしを受けました。当時は尖閣諸島問題で日中の政治関係は緊迫していましたが、ビジネスは別との考えが中国側で強かったのです。

 日本の経営者の対中投資拡大を期待して、中国の役人たちが税金を接待に投じ、高級料理と酒がふんだんに振る舞われる。そのような光景が当たり前でした。

 ところが、2010年代後半になると様子は一変します。

 2018年に別のビジネス関係の視察団の一員として深圳を訪れた際にも市の共産党幹部主催の夕食会に招かれたのですが、お酒がいっさい出なかったことに驚きました。腐敗防止のための規制が厳しくなり、アルコール類を出せなくなったそうです。さらに最近では、「公務員は3人以上で外食をしてはいけない」というルールが定められた地方自治体もあります。