また、サウジアラビアなどの湾岸諸国では、王族が政治権力と富を握り、その還元として教育・医療・雇用などの形で庶民に分配する構造が長く機能してきました。
こちらから見ると前時代的で差別的な社会構造でも、中東では一定の必然性と妥当性をもって機能してきたものです。「非民主的な強権はいずれ倒れるはずだ」といった根拠に乏しい予測ではなく、「強権体制を維持するために、どのような制度や懐柔策が用意されているのか」を冷静に観察する必要があります。
ちなみにイスラム教の聖地メッカを擁するサウジアラビアは、イスラム世界の盟主としての自負が強い国です。ムスリムの人口拡大とともに、その存在感がさらに強まる可能性も念頭に置いたほうがいいでしょう。
ガザ紛争によって
イスラエル経済に逆風が吹く
イスラエルの今後は、より複雑です。
ガザ紛争でイスラエルの国際的な信用は大きく損なわれ、現に、多くの企業や投資家が距離を置き始めています。
ホロコーストへの同情、それをもとに得てきた「道徳的信用」をイスラエルが使い果たし、「加害者」としてのイメージが先行する状態になれば、少なくとも今後10年ほどは、イスラエルの経済とイノベーションには逆風が吹き続けるのではないかと思います。
それでも、テルアビブを中心としたスタートアップ文化や、軍事・サイバー分野での技術力は依然として世界トップクラスです。政権と安全保障政策のあり方次第では、長期的には、ふたたび「起業家の聖地」として復活する余地は十分にあります。
イスラエルの首都エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地が狭い範囲に共存している土地です。イスラム教の聖地「岩のドーム」とユダヤ教の聖地「嘆きの壁」が隣接しています。
エルサレムの旧市街には、宗教の違いを超えて人々が隣り合って暮らし、遊び、買いものなども共にしている日常風景があります。その意味では「対立」ではなく「平和と共存、協調の象徴」になりうる場所であると、エルサレムに行くたびに感じます。その可能性が、今は十分に発揮されていないことが残念でなりません。







