定年の実質廃止には「いつまで働かせるのか」「昭和の時代は良かった」「役職はどうなるの?」などと戸惑う人も多い(写真はイメージです) Photo:PIXTA
塩野義製薬が踏み切る「定年の実質廃止」は何を意味するのか。ソニー、日立製作所、帝人が導入するフリー・エージェント制度は、働く人にメリットはあるのか。AIが業務を代替するのが可能になった今、企業は人事制度を根本的に見直している。働き手にどんな変化を迫るのか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
働く意思と能力がある人なら
70代でも80代でも働き続ける
硬直的だった日本の労働市場にも少しずつ変化が出ている。定年制度を修正する企業が増え、実質的に廃止する大手企業も出てきた。
例えば製薬大手の塩野義製薬は、定年制を見直すと報じられた(2027年見込み)。現在は60歳定年制で、定年後は65歳まで給与水準を下げて再雇用している。
新しい制度では、定年を65歳まで引き上げる。本人が希望し、職務目標を実現できると会社が評価した人は、引き続き正社員として働くことができるようになる。年次で契約を更新し、年齢上限は設けられない見込み。働く意思と能力がある人なら、理論的には、70代でも80代でも働き続けることが可能になる。
もうひとつ注目したい変化は、社内と社外のフリー・エージェント(FA)制度だ。社内FAは、自分の能力に合わせて、希望部署で自分のやりたいことを選択することが可能になる。社外FAは、専門性を発揮して、社外で所得を得るいわば兼業だ。
従来、日本企業は新卒一括採用・年功序列、定年までの終身雇用を前提に人材育成してきた。しかし、高い技術や能力を持つ人材には、従来型の雇用慣行は必ずしも適さないことが明らかになっている。そして、労働力人口の減少は待ったなしだ。
そうした状況下、定例業務はAIに任せ、コストを圧縮しつつ成長し続けるためにも人事制度を根本的に見直すことが企業戦略として必要不可欠となりつつある。
このような時代の到来は、働き手にどんな変化を迫るのか。時代の変化にうまく対応する、専門性を絶えず磨くなどしなければ、制度変革に対応できない人も出てくるだろう。
労働市場は年齢や性別より
「実力がある人材」を重視するように
まず、定年退職する年齢の引き上げについて公的データを見てみよう。厚生労働省の「高年齢者雇用状況等報告」によると、23年から25年にかけて65歳以上を定年退職年齢に定めた企業(定年制の廃止企業を含む)の割合は、30.8%から34.9%に上昇した。対象企業は常用労働者21人以上の23万7739社。
そのうち、定年制を廃止した企業の割合は19年の2.7%から、昨年の3.9%に上昇した。微増だが確実に、定年を実質的になくす企業は増えている。
例えば、YKKグループは21年に正社員の定年を廃止した。同一職務である場合は、年齢を問わず賃金水準を維持する制度を導入した。同社では65歳に達した社員は役職を離れ、自らの専門性を発揮できる職務(いわゆるジョブ型雇用)に従事する。







