葉緑体の中で二酸化炭素を吸収している酵素を「ルビスコ」と言いますが、この酵素がとにかくめちゃくちゃ遅いのです。1秒間に処理出来るCO2分子が3~10個ほどしかありません。普通、他の酵素は1秒間に何千個も処理出来ます。

 グラム換算だと、ほぼ誤差レベルの二酸化炭素しか処理出来ていません。しかも、時々二酸化炭素と酸素を間違えて吸収することも多いのです。間違って酸素を掴んでしまえば、エネルギーを作るどころか、逆に消費してしまいます。もっとマシな吸収法はなかったのでしょうか。

 これは進化の問題です。ルビスコが登場したのは、今から25億年から35億年前です。当時、地球には酸素がほとんどありませんでした。地球上に酸素が登場したのはそれから5億年後、20億年前です。だから当時は「酸素と二酸化炭素の区別をつける」必要がなかったのです。

 まさか、二酸化炭素と似た気体が空気中にあふれるなんて、夢にも思ってもいなかったのですね。つまり、ルビスコは、中高年が若い子の顔の区別が付かないのと同じで、若い世代(20億年前)の分子の区別がつかないのです。

 そう、実は植物が二酸化炭素を吸収し、酸素を生成する量は大したことがないのです。実際、私たちが現在吸っている酸素の大半は、植物ではなくて、海の中の微生物のおかげだと言われています。中でもプロクロロコッカスという小さな海洋バクテリアが、全地球の酸素の約20%を作っています。

光合成の弱点を補うため
植物がとった戦略とは?

 では、ルビスコがドジでノロマな酵素なのだとしたら、なぜ植物はあれだけ大きく成長出来るのでしょうか。ルビスコ一つひとつの二酸化炭素の吸収効率が悪いのなら、植物がとるべき戦略は一つしかありません。

 葉っぱ全体にルビスコを散りばめて、出来るだけ多くのルビスコを空気(二酸化炭素)にさらして、稼働するルビスコの数を増やすことです。1つあたりの生産効率が悪いので、より多くの数を働かせて補うことで大きく成長する戦略なのです。