私は、信頼できる弁護士を茜さんに紹介しました。茜さんにとっては5人目の弁護士です。方針は、はっきりしていました。茜さんに不利な材料も、全部先に出す。
暴言があったこと。物を壊したことがあること。録音されている可能性があること。そして、GPSを付けようとして思いとどまったことなど、その事実まで含めて最初に伝えました。
弁護士は、資料に目を通してこう言ったそうです。
「隠さないでくださって助かりました。こちらが把握していない不利な材料が、相手から出てくるのがいちばん怖いんですよね。先に分かっていれば組み立てられます。それとGPSは本当に付けなくてよかったですね」
離婚調停(家庭裁判所で、調停委員を交えて離婚や財産分与、親権などの条件を決める手続き)で、航平さん側は診断書を出してきました。妻の言動によって体調を崩した、と。
ずっと自分が悪いと思っていた妻
離婚調停の結果は?
けれど、そこには続きがありました。
茜さん側からは、調査報告書と、当日の写真が出されました。さらに、あれほど出すのをためらっていた暴力の痕の写真も。
診断書は、確かに一方の訴えを記したものでした。それに向き合う形でもう一方の事実が初めてテーブルに載ったのです。
婚姻費用についても、弁護士が裁判所を通じて金融機関などに情報の開示を求める「調査嘱託」という手続きを使い、申告された数字の外側にあるお金の動きが、少しずつ明るいところへ出されていきました。
実際の収入が見えてくるにつれ、当初提示されていた額では通らなくなりました。茜さんと娘さんの当面の暮らしを支える額が、あらためて取り決められました。
最終的に、条件を含めた話し合いの結果として離婚は成立しました。
後日、茜さんはこう言ってくれました。
「私、ずっと、自分が悪いんだと思っていました。声を荒らげたのは事実だから、何を言っても調停や裁判で負けるだろうって。でも片岡さんに『不利なところも全部出しましょう』って言われた時、初めて息ができた気がしたんです」







