「自分には強みと呼べるものが何もない」「欠点ばかりで、人並みにすらなれていない」――そう感じたことはないでしょうか。『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』の著者・山口周さんは、弱みこそが人生には重要と伝えています。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)

努力しても報われない人のNG行動・ワースト1Photo: Adobe Stock

社会で評価されるのは「平均点」ではない

――「自分には強みと呼べるものがない」「欠点ばかりが目について、克服しなければと焦ってしまう」という悩みは、多くの人が抱えていると思います。こうした人に、山口さんはどう声をかけますか。

山口周氏(以下、山口):まず知っていただきたいのは、「強み」を探すという発想自体が、実はあまり筋が良くないということです。

企業が持つ独自の資源や能力で決まると考える「リソース・ベースド・ビュー(RBV)」では、競争優位を生む資源の条件として「希少性」「模倣困難性」「代替不能性」を挙げます。つまり大事なのは、他人が容易に手に入れられない、真似できない資源です。誰もが取りに行く流行の資格や学位が競争優位に貢献しないのは、他にいくらでも調達可能だからです。

そう考えると、私たちが着眼すべきは「その人ならではの特徴」です。そして、この特徴は往々にして「弱み」に直結しているとも言えるんです。なぜなら、社会で評価されるのは「平均点」ではなく、他人には真似のできないユニークさであり、このユニークさは往々にして、本人が考える「欠点」と表裏一体だからです。

「弱みを克服して人並みになろう」とする努力は、裏を返せば、自分をどこにでもいる「模倣可能な人材」に近づけていく作業でもあります。皮肉なことに、真面目に欠点を矯正しようとすればするほど、競争優位の源泉からは遠ざかってしまうこともあるのです。

「下手さ」が傑作を生む

――弱みがユニークさになった実例はありますか。

山口:マイルス・デイヴィスの「カインド・オブ・ブルー」は、史上最も売れたジャズアルバムだと言われています。あの抑制の効いたクールな演奏は、当時流行していたジョン・コルトレーンやチャーリー・パーカーのように超絶技巧で吹きまくるスタイルができない、言うなれば「マイルスの下手さ」によって生み出されているんです。

もしマイルスがライバルに嫉妬して「自分の弱点を克服する」と奮起して練習などしていたら、あの傑作アルバムは生まれなかったでしょう。極端な弱みは、強みになる可能性があるのです。

「自分で自分のプロデューサーになる」

――「強みがない、欠点だらけだ」と感じている人は、具体的にどう発想の転換をしたらいいでしょうか。

山口:「自分で自分のプロデューサーになる」ことです。プロデュースにおいて重要なのは「欠点を矯正する」ことではなく「ユニークな点を伸ばす」ことです。私たちは往々にして人の欠点を見て矯正しようとしますが、重要なのは「人のユニークな点」を見て、それをどう時代の文脈で意味づけるか、なんです。

ですから、「自分の強みは何か?」という問いを止めて、「他の人にはない、私のユニークな特徴は何か?」と問い直してみてください。その特徴が、たとえ自分では欠点だと思っているものであっても、時代の文脈次第で、他人には模倣できない競争優位の源泉になりうるのです。