自分の仕事に「働く喜び」を感じている人は、わずか14%――。『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』の著者・山口周さんが各種調査から導くのは、「ざっくり9割の人は自分の仕事をどうでもいいと思っている」という衝撃的な現実です。しかし、だからこそチャンスがあると山口さんは言います。いま最も希少化している経営資源「モチベーション」を集められる組織の条件、そして、私たちが居場所を選ぶ際の新しい基準について聞きました。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)

優秀な人がどんどんやる気を失っていく組織の共通点とは?Photo: Adobe Stock

長期パフォーマンスを最も予測するのは「組織風土」

――私たちは自分の居場所として、なるべく長期的に繁栄しそうな企業を選びたいところですが、企業の長期的なパフォーマンスは何で決まるのでしょうか。

山口周氏(以下、山口):2024年2月、コンサルティング会社のマッキンゼーは「組織風土の健全性が長期パフォーマンスを予測する上で最も説明力がある」とするレポートを発表しました。

私たちは競争力を上げるために、商品の性能向上、コスト削減、研究開発投資、人材育成など、さまざまな努力を重ねていますが、長期的な品質を予測する上で最も説明力があるのは、こうした要素ではなく「組織風土の健全性」なんです。

実はこの指摘自体は組織研究者のあいだでは昔から知られていたことです。

2023年3月決算期から決算報告に「人的資本に関する情報の開示」が義務付けられたのは象徴的です。投資家が組織の状態に関する情報を強く求めるようになったのは、まさにそのデータが企業の未来を予測する上で有効だと気づいたからです。

「モチベーション」という資源が希少化している

――なぜ、いま組織風土がそれほど重視されるのでしょうか。

山口:社会人類学者のデヴィッド・グレーバーは著書『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』で、社会に何の価値も生み出していない仕事が蔓延し、携わる人々の精神が蝕まれていると指摘しました。

実際、ギャロップ社の調査では「仕事に対して前向きに取り組んでいる」と答える従業員は全世界平均で13%しかありません。また、リクルートの「働く喜び調査」では「働く喜び」を感じている人は14%です。その他の調査も含めてまとめれば、ざっくり9割の人は自分の仕事を「どうでもいい」と思っており、「仕事の意味」や「やりがい」を見いだせていないことが示唆されます。

これはつまり、現在の社会では「モチベーションという資源が希少化している」ということです。

どんな時代でも、競争優位は「希少化している資源」にアクセスできるかどうかで決まります。モチベーションを獲得・創出できる組織は、大きなアドバンテージを持つことになるのです。

優秀な人は、ビジョンがあいまいだとやる気を失う

――では、モチベーションはどうすれば生まれるのでしょうか。

山口:最も重要な要素のひとつが「その組織が掲げているビジョン」です。

人を共感させるビジョンを掲げている組織の士気は高まり、ビジョンが曖昧だったり共感できないものであれば、士気は停滞します。

結論は、私たちは「社会的価値の創出」をビジョンとして掲げ、実践している組織に所属するべきだということです。

短期的な業績や待遇に優れていても、共感できる社会的ビジョンを掲げていない、あるいは本気で実行しているように思えない組織を居場所に選ぶことは避けた方がいいでしょう。

一人ひとりがこの観点で居場所を選べば、社会的価値に無関心な企業は人材を確保できず存続できなくなります。個人の選択が、社会全体を良くする力にもなるのです。