449回の失敗で
最適解にたどり着く

 そこで今度はその「成功」モデルを基準にして、また少しずつ違う変更を加えた型を10種類作ってテストした。その後、チームは同様のプロセスを何度も何度も繰り返した。こうして45世代のモデルと、449回の失敗を経て、チームは「これだ!」というノズルにたどり着いた。それまでよりはるかに効率のいいノズルの誕生だ。

 進歩や革新は、頭の中だけで美しく組み立てられた計画から生まれるものではない。生物の進化もそうだ。進化にそもそも計画などない。生物たちがまわりの世界に適応しながら、世代を重ねて変異していく。最終的に出来上がったノズルは、どんな数学者も予測し得ない形をしていた。

 失敗から学ぶにはふたつの要素がカギとなる。ひとつは、適切なシステム。もうひとつは、その適切なシステムの潤滑油となる、マインドセットだ。ここでは、失敗から学ぶために欠かせない要素の1つ目、適切なシステムについて、具体的なプロセスまで掘り下げていこう。

 失敗からうまく学んでいる組織は、どこも例外なく、ある特定のプロセスを実践している。実はこのプロセスは、自然界、科学界、人工知能の世界などさまざまな領域で見られるため、分析の素材には事欠かない。

 ユニリーバの一件は、このプロセスの鑑と言えるだろう。ノズルの開発を通して生物学者のチームが我々に教えてくれたのは、試行錯誤の力だ。彼らがそんな戦略を選んだのは偶然ではない。あれこそ生物学における「進化」のプロセスだ。

 進化は自然淘汰によって、つまり「選択の繰り返し」によって起こる。適応力の強い個体が生き残って子孫を残すと、その中から突然変異によってさらに強みを得た個体が生まれ、その後次々と世代を重ねて進化が進む。ユニリーバが最高のノズルにたどり着いたのも、選択と淘汰の繰り返しのおかげだった。

 こうした適応の積み重ねは「累積淘汰(累積的選択)」と呼ばれるメカニズムだ。イギリスの著名な進化生物学者リチャード・ドーキンスは、名著『盲目の時計職人』の中で、この累積淘汰に関する興味深い説を紹介し、魅力的な問いを投げかけている。あなたも一緒に考えてみてほしい。