「ジョブ型」のさらに先を見越したコンセプトとは?米実践者が語る「仕事の未来と組織の未来」Photo by HasegawaKoukou

去る3月28日、東京・六本木のアカデミーヒルズにて、「仕事の未来×組織の未来」(How to reboot your organization's work operating system)と題したフォーラムが行われた(主催:マーサー ジャパン)。これからの企業に求められる新しいHR(Human Resources/人材)の戦略と行動を論じた同名の書籍『仕事の未来×組織の未来』(原題Work without Job)は、「ジョブ型雇用」のさらに先を見越した、新しいワークオペレーションシステムによる人事戦略を紹介し、かねて欧米の企業で話題を呼んでいた。この書籍の日本語訳刊行を記念した本フォーラムの模様をかいつまんでお伝えする。(構成・文:奥田由意、編集:ダイヤモンド社編集委員 長谷川幸光)

企業の雇用や人事戦略は
「ジョブ型」から「ポートフォリオベース」へ

 職務内容と求めるスキルを限定して採用する「ジョブ型雇用」を導入する企業が日本でも増えてきた。一方で、「Chat GPT」などAIの爆発的な進展と普及に見られるように、経済もテクノロジーも、そして個人の価値観も、これまでと比較にならないスピードで激変。ジョブ型雇用の「その先」を考える必要性に迫られている。

 イベントに登壇したグローバル・コンサルティング・ファームのマーサーでシニアパートナー/グローバルトランスフォーメーションリーダーを務めるラヴィン・ジェスターサン氏は、"Work without Jobs"(ジョブではないワーク)と題した講演内で、コロナ禍によって、2年間で20年分に当たるデジタル化が加速し、人工知能や自動化が進んだ。仕事はますます、従来の場所や時間、構造といった枠組みから解放されることになったと指摘する。

 企業の関心は、「成⻑、効率、リターン」から、「弾力性、柔軟性、アジリティ」へ転換しつつあり、「雇用や人事戦略に関して、一人の人が複数の仕事を組み合わせて働く『ポートフォリオベース』の考え方が導入され、アジャイル(迅速に仕事に対応できる)なスキルを持つ人材が求められるようになっていく」と述べる。

 一体どういうことか? ラヴィン氏は、(1)ジョブではなく、ジョブを細分化した仕事(タスクやスキル)をポートフォリオベースで考え、(2)細分化した仕事でプラットフォームを構築し、(3)細分化した仕事を最適につなげる方法を考える。この3点が重要になると強調する。

 それは、従来のように「中央集権的に人と仕事を管理する」形から、「個人のキャリア自律を支援する」形へ、変化することでもある。個人はプラットフォームを利用することで、よりエンパワーされ、自律的に能力開発しやすくなるのだ。

 この変化でカギとなるのは「新しいワークOS(オペレーションシステム)」というコンセプトだ。