キャピタル・ワンは創業以来、プロダクトデザイン、マーケティング、コミュニケーション・チャネル、クレジットライン、顧客の選び方、債権回収方針、クロスセル(関連商品の購入勧誘)の判断など、多岐にわたる検証を毎年何千件も実施している。
創業者の2人は、どんな決断も何千もの実験によって系統的に検証する、いわば「科学研究室」を企業の中に創り上げたのだ(注4)。
2015年時点で、キャピタル・ワンの評価額は約450億ドル(約4兆5000億円)にのぼる。
国の雇用政策まで
「実験」で効果を確かめる
今、業界を問わず、あちこちでRCTによる静かな変革が起こっている。これまでで最も大掛かりだったのは、国の雇用政策に用いられたケースだろう。
1980年代のアメリカでは、社会福祉の受給者を減らし、雇用を創出することが緊急課題のひとつだった。従来なら、大統領や議員たち(さらには政策アドバイザーや圧力団体との連携)によってトップダウン方式で雇用政策が決定されていたはずだ。
『失敗の科学 成長する組織の条件』(マシュー・サイド著、有枝 春訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
しかし実際には、政策は検証によって決定された。その詳細は、ジム・マンジが名著『Uncontrolled(非対照)』で取り上げている。当時、アメリカ連邦政府は州政府に対し、一時的に裁量を与えた。「雇用創出の効果をRCTで分析する」という条件つきで、州が連邦政府の規制を受けることなく、独自でプログラムの運営をすることを許可したのだ。
検証の結果は劇的だった。それまで行われていた「雇用主への補助金給付」や「福祉の受給期間制限」には、効果がないことが明らかになったのである。
しかしたったひとつの施策だけ、就労促進効果が見られた。それは社会福祉の受給者に「一定の就労義務」を課したことだった。この結果を見て、クリントン政権は「ワークフェア政策」を提唱した。この政策はその後、共和党優位の議会で承認を得て実施され、大成功を収めている。







