だから、お客様がゆで太郎のそばを食べて抱く感想が「立ち食いそばなのに、めちゃくちゃうまい」なんです。私はむしろそれでいいと思っています。
ゆで太郎は最初から生そばを使っています。袋から出した茹で麺でも、乾麺でもありません。そもそもそば職人の方からすれば、そば粉が入っているかどうかもわからないような麺を「そば」と呼ばれることは心外なんだそうです。
立ち食いそばと、町のそば屋の間には圧倒的な断絶があります。しかし、町のそば屋が矜持を持ったまま、立ち食いという形式を取った。それがゆで太郎なのです。
東京では「ゆで太郎=立ち食いそば」というイメージはまだ根強いんです。「立ち食いそば」という言葉が持つ「まあそういうものだろう」という期待値の低さを入口にしているともいえます。その結果、実際に食べた時の驚きがある。それが私たちの狙いなのです。
効率化したのは
味ではなく工程
レバーをひねるだけでダシとかえしが自動で混ざり、熱々のつゆが出てくる機械があります。社内からも「ああいう設備を導入したらどうでしょう」という提案を受けたことがありますが、私はすぐに却下しました。
理由は単純です。美味しくないと思うからです。
セントラルキッチンについても考え方は同じです。以前、大手ファミリーレストランのCFOと工場の話になったことがありますが、「店で作った方が美味しいですよ」と笑ってごまかしました。これこそがゆで太郎の一番の強みであり、競合他社に一番真似されにくいところだと思っています。
以前出演した『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)でMCの村上龍さんから「なぜそこまでこだわれるのですか」と聞かれ、「執念です」と答えたことがあります。半分冗談ですが、半分は本気です。
美味しいものを手頃な価格で届けることには、大きな社会的価値があると思っているからです。







