私は業界のイメージを変えてきたという自負があります。これまでの立ち食いそばは、速さがすべてでした。茹で置き、揚げ置きが当たり前で、それは間違っていません。注文から15秒で出てくる。茹で上がった麺が積んであって、お客様が来たら温めてすぐに提供するからです。それは忙しい会社員にとって、とても合理的な仕組みです。

 ゆで太郎も、その立ち食いそばから始まった会社です。その文化を否定するつもりはありません。

 ただ、私が目指したのは、「美味しいそばを郊外で提供すること」でした。

 郊外のお客様は、都心ほど時間に追われていません。少し待ってでも、美味しいものを食べたいと思ってくださいます。だから私たちは、打ちたて、茹でたて、揚げたてにこだわりました。

 一方で、効率化も進めました。ただし、効率化したのは味ではありません。工程です。

「ダシを20分から5分で取れるように」「氷冷シンクを導入」「麺の長さを37センチに統一」――これらに加え、職人の技術を製麺、茹で、天ぷら、丼、接客へ分解し、短期間で習得できる仕組みにしました。

大切にしてきたのは
美味しさの説明より体験

 5分ダシパックのヒントになったのは、東京・日本橋コレド室町にあるにんべんさんのダシ専門店でした。

 店頭ではダシをカップで販売していて、塩や醤油を少し垂らすだけで十分美味しい。二日酔いの朝にも飲みたくなるくらい、しっかりダシの味が出ていたんです。

 それを飲んだ時、「もっと細かく粉砕すれば、短時間でもダシが取れるのではないか」と思いました。

 取り引き先のマルトモさんに相談すると、「5分で取ることは可能だと思う」という回答でした。

 もちろん、ダシパックそのものはゆで太郎の発明ではありません。うどん店でも使われていますし、家庭用の商品もたくさんあります。