私たちがこだわったのは、中身です。ゆで太郎のダシは、江戸流の三種混合です。鰹節、宗田節、サバ節。
この基本は昔から変わっていません。変えたのは、粉砕の細かさと配合です。
何度も試飲を繰り返し、「もう少しダシ感を」「もう少し香りを」と、何度もやり取りを重ねました。
例えば鰹節にも、荒節と枯節があります。荒節は力強い旨味。枯節は上品な香り。枯節を増やせば香りは立ちますが、今度は全体の印象まで変わってしまう。本当に繊細な世界です。「もう少し余韻を」といった、感覚的なやり取りも繰り返しながら、今の味にたどり着きました。
ここまで話をすると、「どの配合なら美味しくなるのですか」と聞かれることがあります。
でも、正直なところ、それを言葉だけで伝えるのは難しいんです。ダシはとても繊細です。荒節が何パーセント、枯節が何パーセントと言われても、多くの方にはピンとこないでしょう。それでいいと思っています。
『ゆで太郎の儲かる仕組み 22年連続黒字を支えるがっちり経営術』(池田智昭 ワニブックス)
作り手は、どうしても「これだけこだわっています」と説明したくなります。今なら「エビデンス」と言うのでしょう。
「この配合だから美味しい」
「この製法だから違う」
もちろん、それも間違いではありません。でも、お客様は説明を聞きに来るわけではありません。一杯のそばを食べて、「この値段でこの味なら、また来たい」。そう感じていただければ、それで十分なのです。
理屈より、まず一口。説明より、体験。ゆで太郎が大切にしてきたのは、結局そこなのだと思います。







