上司が気遣いで使う「絶対NGワード」の正体

 部下を気遣うあまり、多くの管理職が無意識に使ってしまうNGワード。それは「簡単だからやってみて」という一言です。

 相手の恐怖心を取り除き、仕事を引き受けやすくするため、上司は「今回の仕事は簡単な作業だから」「難しくないから気軽に引き受けて」などと言ってしまいがちです。私自身もマネジメントの実践の中で、注意していないと、うっかりこう言ってしまいそうになる瞬間があります。しかし、周囲から人望を集める上司は、意識的にこうした言い方をしないようにしています。

 なぜなら、「簡単だから」という言葉は、部下から断る余地を奪ってしまうからです。「こんなに簡単な仕事すら出来ない人間だと思われたくない」という心理が働き、部下は自分のスキルや現在の業務量に不安があっても、出来ませんと言えなくなる。配慮のつもりでかけた言葉が、かえってプレッシャーとなり、部下の逃げ場をなくしてしまうのです。

 成長意欲の高い部下や実績を出しているハイパフォーマーにとって、この言葉は別の意味を持ちます。「簡単だから」と言われた瞬間、「簡単な仕事しか任せられないような人間だと評価されている」と受け取り、自分は期待されていないのだと強い失望を感じてしまうのです。

 また、仕事を実際以上に軽く見せる物言いは、ハラスメントを恐れるあまり、部下に配慮しすぎて成長機会を奪うホワイトハラスメントと受け取られるかもしれません。

 配慮しているつもりが、プレッシャーを感じる部下と失望を感じる部下の双方を生み出し、結果として上司への信頼を失わせることになるのです。

「簡単さ」ではなく「意義」で人を動かす

 人望の厚い上司は仕事を簡単さを理由に引き受けさせるのではなく、仕事の意義で動機づけを行います。

 任せる仕事が難易度の高いものであれば、その難しさをごまかさずに正直に伝えます。そして、「今回の案件は、あなたにとっても難しい挑戦になるかもしれない」と前置きをしたうえで、「なぜ、他の誰でもなくあなたに頼みたいのか」という理由や仕事の価値を丁寧に説明します。

 人が主体的に動き、高い成果を出す大きな動機のひとつは「仕事の意義」や「他者への貢献感」を実感できることです※1。自分の仕事が誰の役に立ち、チームや顧客にどんな価値をもたらすのかが見えたとき、人はより高い目標を設定し、自発的に熱意をもって行動するようになります。

 ただし、ただ漠然と「君ならできる」「期待しているよ」と伝えるだけでは不十分です。「○○さんならできる」と言えるだけの明確な根拠を添える必要があります。