確かに一連の出来事や事件はドラマとセンセーションに満ちており、折にふれて単発的に報道されてきたが、ここで流れを整理しておきたい。
そもそもゴーン事件が明るみに出たのは内部告発がきっかけだった。ゴーンの罪は金融商品取引法違反にとどまらず、会社法違反(特別背任)にまで発展した。
簡単にいえば、ゴーンは日産のトップという立場を悪用して私腹を肥やしたのである。
保釈中の2019年12月に中東のレバノンへ逃亡したゴーンは一貫して無罪を主張し、一連の事件をこう断じている。
「すべて日産の陰謀だ」
しかし彼の罪は明らかである。
長期間にわたってその事実が明るみに出なかったのは、彼と彼の取り巻き連中が巧妙に事を進めたからにほかならない。ゴーンはこう思ったのではないか。
「絶対にバレないはずだったのに、いったいどうして発覚したのか。私のような外国人にコントロールされるのを嫌う日本人、ルノーとのアライアンス(企業連合)の強化を恐れる日本人……。彼らが私を陥れるために、いろいろと根掘り葉掘り嗅ぎ回ったのだろう」
「そうだ、これは陰謀に違いない」
外国人や外国企業にコントロールされるのを嫌う日本人は、日産社内に限らず一定数いるだろう。ゴーン事件について内部告発をした人、内部調査にかかわった人たちの心中にその種の思惑がどれほどあったのか、社長の私さえあずかり知らぬところで始まった調査だから推測の域を出ないが、ゼロではなかったかもしれない。
しかし、内部調査と検察の捜査で露呈したゴーンの背任行為は「法に触れるとは知らなかった」といったレベルではなく、明らかな確信犯だった。発覚した不正行為の悪質さは彼らの想像をはるかに超えていたに違いない。
内部調査の結果を聞かされた時、私は耳を疑った。
当時のゴーンはアライアンス強化に向けて強引さを増していた。そんなゴーンに対して、日産社内で非難の声が高まっていたことも確かだった。とはいえ、ルノー・日産自動車・三菱自動車のアライアンスを率いていくにはまだまだゴーン会長のリーダーシップが必要だと私は思っていたのである。
しかし内部調査による数々の不正の証拠を見せられ、私はこう思った。
「不正行為があったのは明白な事実だ。これは動くしかない。とんでもないショック、混乱が起きるだろうが腹をくくってやるしかない」
覚悟を決めたのだった。







