日本の飲食業界全体を襲う「不良従業員」の暴走は新たなフェーズに入った Photo:JIJI
くら寿司の「ちいかわ」コラボが、従業員による不正を受けて中止に。騒動の前後、家族と店舗を訪れた筆者は、思いがけない光景を目にした。「90分待ち」のはずが、店内では何が起きていたのか。そして、この不祥事を一部の従業員の問題として片づけてよいのか。身近な外食体験から、飲食大手も人ごとでは済まされない問題を考える。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)
コラボ中止の余波?
くら寿司店舗で感じた〈異変〉
思いがけず3日の間に二度もくら寿司に出かけることになり、間接的に事件を実体験することになりました。ちいかわのコラボグッズ横領事件です。経緯を紹介します。
先週土曜日に「夕食は寿司にしよう」ということになり、何も考えずにくら寿司の持ち帰りメニューをスマホで注文しました。自宅から歩いていくのに一番近いからです。
普段は注文した商品を受け取りに行くのは私の役割なのですが、なぜかその日は家内が一緒についてきました。店頭で4000円を支払って寿司を受け取ろうとすると、家内が「だめだめ、湯飲みをもらわないと」というのです。
それで初めて気づきました。レシート3000円ごとに、ちいかわコラボの湯飲みを一個もらえるのです。私はまったく眼中になかったのですが、家内はアマゾンプライムでちいかわを連続鑑賞するぐらいのちいかわのファンで、あとから考えるに、この日、家族の会話の中で夕食は寿司にしようという流れができたときから湯飲みを狙っていたのでしょう。
この湯飲みプレゼントは予想を上回る大人気だったようで、9月4日に始まって、私が出かけた5日の夕方には4種類あった湯飲みのうち3種類が完売。棚に残された湯飲みも残りわずかという状態でした。そしてその日の夜に不祥事が発表され、キャンペーンはわずか2日で終了したのです。
事件のきっかけは、あるお店で来店客から「いくらくじを引いてもコラボ景品が出てこない、店員が抜き取っているのではないか」という苦情が出たことだそうです。このキャンペーンが始まる前からメルカリに景品やキャンペーンののぼりが出品されていたことから、特定の店舗で関係者による横領があった疑いが強まり、本部は急遽、キャンペーン中止を決断したのです。
さて、我が家ではその夜、ちっちゃな論争が起きました。うれしそうに湯飲みをみせびらかす家内に対してうっかり、「明日だったら400円引きだったんだろ。なんか損した気分だよね」と私が言ってしまったのです。くら寿司ではキャンペーン中止のお詫びとして9月6・7日の二日間、会計を10%引きすることにしたのです。
たのしく終わるはずだった週末のだんらんのひとときが、この私の発言で一転して「推し活派」と「昭和のおじさん」の対立ムードにかわってしまいました。
いちおう謝ったうえで私ももやもやしていたのですが、その二日後の9月7日、なんとなくいつもより早く仕事が終わりそうになりました。そこで自宅に電話して、「今日の夜、みんなでくら寿司に行こうか」と提案したのです。
経済学的に言えば「株のなんぴん買い」と同じで、値下がりしたところでもう一度購入すれば、平均購入価格は安くなるのです。
このタイミングだとすでに夕食の時間帯の予約はぜんぶ終了しているので、仕事が終わった私が先にお店に行って、順番待ちのチケットを引くことにしました。その時点で約90分待ちという表示で、それくらい後の時間に来るように家族に伝えると、私は新宿の繁華街で時間をつぶすことにしました。
ところがしばらくすると家族から電話がかかってきます。「お店に来たらもうとっくに順番が来て飛ばされているよ」というのです。まだ発券から40分もたっていません。
あわててお店に戻ると、いつもひとであふれて座れないはずの待合室は空席が目立ち、呼び出し番号はすでに30番も先に進んでいました。
あくまでイチ経済評論家のイチ体験記なのですが、要するに10%引きと知ってお店に来たひとよりも、コラボが終わったことで当日予約をキャンセルした人のほうが多かったということでしょう。
この日は家族でいつもより高いネタを楽しんで5000円の支払い。その後、ネットで話題になった「うっかり10%になりそこねる」事態も実体験。決済直前に気づいてくれた店員さんのおかげで、やり直して無事500円引きに。こうして二日前のちいさな諍(いさか)いはお互いに解消されました。
さて、この問題、今後くら寿司だけでなく大手飲食チェーンを巻き込む大きな問題になりそうです。
問題の本質はふたつあります。







