昨年、山から鉄砲水が押し寄せてきたとき、ネパール人技術者のサントシュ・アドヒカリ氏(34)は高台に駆け上り、かろうじて難を逃れた。2週間前、再び激流が押し寄せた。今度はもっと大規模で速く、水と氷、岩と泥、そして恐怖が一体となった土石流だった。その波は、アドヒカリ氏が所長を務めていたラスワガディ水力発電所を襲い、鉄骨とコンクリートの防護壁を爆発的な力で引き裂き、同プロジェクトの巨大なトンネルに流れ込んだ。アドヒカリ氏が暮らしていた建物群は数秒のうちに飲み込まれ、暗灰色の泥土のほかは何も残らなかった。ラスワガディ水力発電所は、8月26日にネパールを襲った災害で破壊された十数カ所の施設(建設中も含む)のうち、最初のものだった。氷河の崩壊で解き放たれた猛烈な水の塊は、トリシュリ川を流れ下り、山岳国ネパールの経済成長をけん引するはずだった約60キロメートルに及ぶ多数のダムの連なる地域を壊滅状態にした。全体で約1400人が死亡し、5000人以上が行方不明となっている。
ネパール水力発電への賭け、氷河崩壊と巨大土石流が誤算に
投資家は数百もの水力発電所に資金を投じてきたが、ヒマラヤ山脈で高まる氷河の不安定さは想定外だった
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